研究課題/領域番号 |
24760459
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
肥田 剛典 東京理科大学, 理工学部, 助教 (60598598)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 液状化 / 杭基礎 / 遠心力載荷実験 / 免震 / 損傷評価 / 部分空間法 / システム同定 / 応答変位法 |
研究概要 |
本年度は、液状化地盤-杭-免震構造物系の動的遠心載荷実験を行い,入力地震動特性と杭の損傷が免震構造物の応答に及ぼす影響を検討した.免震周期より十分短い周期の成分が卓越する地震動を入力した場合、損傷杭のケースの免震層変位は杭が健全であるケースより小さくなった。これは、健全杭のケースにおいて、免震構造物の初期固有周期に近い周期帯域における基礎部加速度の振幅が、損傷杭のケースより大きくなったためである。一方、免震周期に近い長周期成分が卓越する地震動を入力した場合、損傷杭のケースの免震層変位は健全杭のケースより大きくなった.これは、健全杭モデルの基礎部は振動台と同様の挙動を示す一方、損傷杭モデルの基礎部は地表面付近と同様の挙動を示し、地盤増幅により地表面加速度の振幅が振動台加速度より大きくなる長周期帯域において、損傷杭モデルの基礎部加速度の振幅が健全杭モデルより大きくなったためである。 次に、上述の遠心力載荷実験により得られた加速度データに対して部分空間法に基づくシステム同定手法を適用し、杭基礎の損傷評価について検討した。入力を振動台加速度、出力を地表面、基礎部および上部構造物加速度として、系の固有モードを求めた。その結果、地盤の振動が卓越するモードにおいて健全杭のケースの基礎部の振幅は地盤より小さかったのに対し、損傷杭のケースの基礎部の振幅は地盤と同程度であった。これは杭が損傷して地盤の挙動に対する基礎部の抵抗が低下したためと考えられる。このことから、本研究で検討した手法により、杭の損傷を検出できる可能性があることが分かった。 さらに、遠心力載荷実験および応答変位法に基づく損傷杭の曲げ剛性の同定手法について検討した。応答変位法により算定される基礎部変位が実験におけるそれと整合するような杭損傷部の曲げ剛性を求めることで,杭の損傷を評価できる可能性があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、平成24年度に遠心力載荷実験を実施し、実験結果の分析を行う予定であった。杭基礎の損傷評価手法の構築に関する研究は平成25年度に行う予定であったが、平成24年度に部分空間法によるシステム同定に基づく杭基礎のヘルスモニタリング手法や応答変位法による杭損傷の同定手法について検討した。従って、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、地震時における杭体の傾斜角や光ファイバーによる杭のひずみ計測手法を利用し、杭の損傷評価を行うモニタリングシステムの開発が行われている。これをふまえ、平成25年度は、遠心力載荷実験で得られたデータに基づき、杭損傷の有無による杭のひずみの深度分布や杭体の傾斜角、基礎部変位の差異等を検討する。 また、3次元有限要素法による有効応力解析によって、平成24年度に実施した遠心力載荷実験のシミュレーション解析を行う。健全杭および損傷杭を用いたケースの実験結果を再現する解析モデルを構築し、モデル化の妥当性を検証するとともに、杭の損傷が長周期構造物の地震時応答および杭の曲げモーメント等の応力に及ぼす影響や、そのメカニズムを検討する。 さらに、実験で用いた2種類の入力地震動に加え、特性の異なる複数の入力地震動を用いた応答解析を行う。その解析結果から、どのような特性の地震を受けた場合に長周期建物の応答が過大となるかについて検討する。杭基礎が損傷した場合に建物に生じる問題点を明らかにし、それへの対策について考察する。また、地震動特性の違いによる杭基礎の損傷検出の精度について検討する。 これらに加えて、平成25年度には、部分空間法によるシステム同定に基づき、杭剛性の同定手法に関する研究を行う。これにより、地震時における建物や地盤の強震記録を元にして、杭損傷の有無のみならず、その損傷の程度をも推定するシステムを構築する。 以上のような各種の検討から、より汎用性の高いヘルスモニタリング手法の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き、液状化地盤のシミュレーション解析のためのソフトウェア「Soil Plus」をレンタルする。その他、杭のヘルスモニタリングプログラム作成に際して参考にする書籍等の購入費や、国内の学会や国際会議参加費および旅費として研究費を使用する計画である。
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