研究課題/領域番号 |
24760460
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
佐藤 幸恵 東京都市大学, 工学部, 講師 (70408714)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 構造体コンクリート / 圧縮強度 / 中性化 / 耐久性 / 施工方法 |
研究概要 |
1960年代に建築された2棟の建築物の調査を実施し,構造体強度分布性状および表層モルタルの透気性,中性化について調査を行った.仕上モルタルが施工されていたため,当初予定のシュミットハンマーは仕上材の上からのみ調査を行い,参考値とした.調査の結果,対象建築物は竣工年が1年の差であるにも関わらず,一方は設計基準強度値を大きく上回り,全体的に部材ごとの差異も小さい結果となったが,もう一方の建築物は,平均は上回ったが,設計基準強度を下回るコアが複数あり,施工に何らかの問題があることが明らかとなった. 1960年代は,ポンプ工法が急速に進展したものの,施工技術の未熟さにより施工不良が多発し,日本建築学会では施工技術の向上を目的に1972年にコンクリートポンプ工法施工指針案・同解説を上梓した経緯がある.対象とした建築物の施工された年代では,前者はポンプ工法以外(バケット打ち),後者はポンプ工法と考えられ,施工方法と施工技術が構造体コンクリート強度に大きく影響を及ぼしていることが明らかとなった. 仕上モルタルの品質は,シュミットハンマーでは平均でおよそ30N/mm2程度あり,厚さは各階変動するものの30~60mmの厚さがあり,構造体コンクリートの中性化は5mm以下で躯体保護効果は十分に有していたと考えられる.同時に行った透気性試験(トレント法)では,中性化と透気係数の関係に相関性があることが明らかとなった.すなわち,モルタルの品質にかかわらずモルタル厚さが中性化抑制効果に対して支配的要因にあることを明らかにした. これらの結果から,施工年代と工法との関係を整理し,建築物の構造体品質の変動要因に組込む必要があり,かつ,中性化を寿命指標とした場合に仕上材の躯体保護性能の影響が大きいことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想よりも,当時の施工技術によって構造体コンクリートの品質が大きく異なるため,それらの情報を構造体品質の評価手法に取り込んだ方法を検討する必要が生じた. また,モルタル仕上げに対しては,モルタルの品質に関わらず,モルタル厚が30mmを超えると中性化抑制効果が大きいことが明らかとなったため,これらを組み込んだ評価手法を検討する必要が生じた. 以上のことから当初予定より若干遅れはあるものの,コンクリート構造物の寿命予測に必要な要因が整理できたことから,最終的な目標に対しては,順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
現存する鉄筋コンクリート構造物の施工技術の変遷を調査し,レディーミクストコンクリート黎明期,ポンプ工法の発展期の技術水準を構造体品質の関係を文献調査などによって整理し,評価のための事前情報データベースの構築を行う. 研究年度内に調査可能な建築物については積極的に調査を行う. なお,これまでに得た試験値,評価係数を相対的に考慮し,構造体コンクリート強度を評価しうるサンプル部位を選定し,サンプル箇所に応じた係数を提案する.つまり,これまでの結果と当該年度内に調査可能な対象建築物の調査結果を用いて,非構造部材のみで構造体を評価する場合の評価方法を検討する.これは,通常の耐震診断が使用中の状態で実施されることを考慮したものである.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の建築物調査において,コア供試体採取が円滑に実施されたため12895円を節約することが出来た.平成25年度はこの予算を論文投稿費用などに活用し,学協会への積極的な成果発表を行いたい. 研究用使途としては,コアサンプル採取に用いる消耗品類,ひずみゲージ等を購入する.その際に調査場所からのサンプル送料等が必要となる. また,前述した積極的な学協会での発表を行うために,膨大な資料をまとめるための資料整理を依頼する人件費が必要である.
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