研究課題/領域番号 |
24760463
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
山下 拓三 独立行政法人防災科学技術研究所, 減災実験研究領域兵庫耐震工学研究センター, 任期付研究員 (40597605)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 鋼構造 / 残余耐力 / 有限要素解析 / 震動台実験 |
研究概要 |
本研究では,本震および余震を想定した2回の加振実験を実施し,鋼構造骨組の残余体力の評価を行う.鋼構造骨組の実験モデルおよび加振計画を決定するために,本年度は事前解析のための解析モデルの作成を行った. 解析モデルとして,短辺6000mm長辺12000mmの4層の鋼構造骨組を採用し,柱には□-400x400x16,大梁にはH-600x300x12x20,小梁にはH375x175x7x11断面の部材を用い,各フロアに厚さ130mmのスラブを設置した.柱梁接合部は通しダイヤフラム形式とした.柱脚は露出型柱脚とした.モデル作成に先立ち,角形鋼管柱の弾塑性座屈解析を対象として,様々な要素サイズ,要素形状,要素分割パターン,時間刻みで解析を実施し,適切な解析条件の設定のための知見を得た.この知見をもとに,鋼構造骨組の解析モデルの作成を行った.6面体ソリッド要素により要素分割し,モデルの規模は要素数1,882,416,自由度数8,779,968となった.なお,本モデルのスケールでは3体の試験体を同時に震動台に載せることができないため,モデルを縮小することを検討することにした.そのため,1/2縮小モデルも作成した.また,試験体のコストを抑えるために簡易にモデル化できないか検討するため,3層4層を質量とバネで模擬した上層模擬モデルを作成した.なお,骨組の1層をプッシュオーバー解析することにより変位-反力関係を求め,それをバネに反映させた. 上層模擬モデルが4層モデルをどの程度模擬できているか確認するために,それぞれのモデルで固有値解析およびsine波入力による時刻歴解析を実施した.また,縮小モデルの妥当性を確認するために,縮小モデルでもsine波を用いた時刻歴解析を実施した.現在,解析結果を整理し,モデル化の妥当性を検証中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,ソリッド要素を用いた薄板構造物の有限要素解析で高精度かつ収束性の高い結果を得るための解析条件を整理した上で,4層鋼構造骨組の詳細有限要素モデルの構築に成功し,実験試験体および加振計画を決定するための解析の準備を整えた. しかし,解析結果については現在整理中であり,地震波検討のための連続加振の解析についてはこれから実施する予定である.そのため本年度中に予定していた,実験試験体の決定,本震を想定した第一加振波と余震を想定した第二加振波の決定には至っていないため,速やかに解析結果をとりまとめ,実験試験体及び加振波を決定し,実験準備を進める必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
本震,余震による鋼構造骨組の連続解析を行い,本震で適度に損傷し,余震で崩壊に至る解析結果を得ることができる解析モデルと加振波を把握し,実験モデルおよび加振計画を決定する. この事前検討をもとに,3体の試験体の製作を行い,まず,本震を想定した第一加振を実施して3体の損傷モデルを得る.解析と第一加振実験の結果を比較し,解析の妥当性検証と解析モデルの精度向上を試みる.必要に応じて,修正した解析モデルの解析結果を用いて第二加振実験で用いる地震波の強さを修正する. 続いて,余震を想定した第二加振実験を実施する.3体の損傷モデル毎に,解析により決定した加振波,10%程度地震動の強さを増加させた加振波,10%程度地震動の強さを減少させた加振波の異なる加振波で加振して,倒壊に至る地震動の強さを絞り込んで,鋼構造骨組の残余耐力を評価する. 最後に,解析と第二加振実験の結果を比較することにより,解析の妥当性検証と解析モデルの精度向上を試みる.この改良された解析モデルを用いて数値シミュレーションを行い,実験より狭い範囲で崩壊に至る地震動の強さを絞り込み,より高い精度での残余耐力の評価を解析的に試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
解析の進捗が当初計画よりやや遅れていることから,予定していたデータ保存用のHDDの購入やデータ整理のための人件費への研究費使用が繰り越されたため,当該研究費が生じた. 高精度有限要素解析による解析結果のデータ量が膨大となるため,相当数のHDDが必要となることから計算機関係消耗品を計上し,データ整理のための人件費を計上する. 鋼構造骨組の余震に対する残余耐力評価のための震動台実験を実施するため試験体,計測機器などの消耗品及び工事関係費用を計上する. 書籍,成果発表旅費は研究遂行のために必要な一般経費である.
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