研究課題/領域番号 |
24760470
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
福留 伸高 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任助教 (30599808)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 気象データ / 気候区分 / 地域特性 / 多分野活用 |
研究実績の概要 |
平成26年度において、以下に示す内容を実施してきた。 1.気象観測システムの設置・観測:設置した東京都内の都立高校1校の気象観測システムにおいて適正な運用と観測データの収集を継続して実施した。同システムで運用される都内約30地点のセンサとアメダスの観測データを利用した精度検証や周辺環境の比較分析を行った。本研究において設置した高校は都心部と多摩西部の中間に位置して周辺環境が低層住宅地域の多様な周辺環境を有する中で比較対象とできる観測データを取得できた。 2.東京都内の地域気候特性の分析:都内設置の約30地点のうち、14地点を抽出して収集した観測データ(気温、外気エンタルピー荷など)から算出した外気負荷等を用いた比較分析を進め、広域と狭域、地表面状態の違い、周辺地形状の違い等によって観測データ分布の違いを明らかにした。特に空調設備設計を行う際に重要な外気導入に伴う熱負荷算出の結果から23区内と多摩地域の気候特性の違いを確認して都内の気候区分に基づいた建築計画を定める意義を示した。こうした知見をまとめ、空気調和・衛生工学会において学会発表を行った。 3.観測データの多分野活用に関する活動:大学等の研究機関や高校生・教員などが参加した高大連携事業成果報告会において、研究代表者が専門とする建築学分野における気象観測データの海外も含めた活用実態に関する取り組みについて口頭発表を行い、気象データの社会的価値と学術的な分析手法等を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、公共建築物の一つである学校施設等に気象観測システムを設置して観測密度を高めた地域気候特性の分析を行い、省エネ・環境配慮技術の適正な導入に寄与する地域気候区分やデータの社会的ニーズに対応する多分野活用手法を検討している。現段階において、以下に示す内容を達成してきた。 1.気象観測システムの設置・観測:気象観測システムを都立高校1校に設置・観測している。アメダス観測値や設置点の周辺環境の比較調査を行い、一定の観測精度が継続して担保していることを確認した。また地域性が大きく影響する気象要素において設置校のデータの有用性を確認し、観測密度向上に寄与する知見を得た。 2.東京都内の気候特性分析:既設置の14地点で収集した観測データと観測データから算出した建築設備設計のための利用データ(外気導入に伴う外気負荷の推定値など)の比較分析し、都内の各種データ分布の違いを明らかにして気候区分設定の必要性を示した。特に設計用の気候区分設定を実施するにあたり、外気温と外気エンタルピーを用いた外気負荷推定の必要性を確認した。その過程で各地点の特性(標高、海岸線からの距離など)と評価用データの関係性の分析を進めていく中でより詳細な分析を行う必要性が生じた。 3.観測データの多分野活用の調査:設置校の教員・生徒との定期的な学校訪問時やシンポジウムや成果報告会等での意見交換を通し、高校側の主体的な活動動機の認知がと具体的な計画立案のサポートの重要性が高いことに着目し、高校側が主体的の取り組めそうな話題やデータ利活用から広がる分析・プレゼンテーション能力の向上といった個人能力の可能性を認知させることの重要性に着目して継続的な支援を行った。加えて2の過程で見えてきた各地点の地域特性と評価用データの関係性の分析に関する知見も含めた活用手法の提案を模索する必要性も確認した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度で得られた結果を踏まえ、以下に示す計画のもとに本課題に取り組む。 1.継続的な気象観測システムの運用:本課題において設置した地点と既設置地点の観測データ収集と観測精度の検証を継続する。 2.都内の気候分布特性の分析:都内約30か所の観測地点で取得されたデータを利用して、観測密度を高めた気候分布特性を各気象要素データ別に整理を継続して勧めるとともに、周辺地域の環境条件の変化等も調査して観測データの妥当性を確認して東京における地域別の気候特性の大まかな全体像を把握して論文等にて公開していくことを目指す。 3.社会的ニーズに対応するデータ利活用法の提案とアプリケーションの開発:本課題では都立高校への気象観測システムの設置を進めている。設置校の教員・生徒からの意見(ニーズ)を踏まえ、理科教育の教材データや災害時の登下校の安全可否の判断指標としての活用といった多様な提案につなげる。このためには設置校の教員・生徒との定期的な打ち合わせと高校側の主体的な取り組み姿勢が重要であり、研究代表者として情報を定期的に発信していく予定である。 また1から3で得られた知見をまとめ、日本建築学会、空気調和・衛生工学会などにおいて口頭発表、学会論文集への論文投稿を進めるとともに、設置校の教員・生徒がまとめた研究成果をシンポジウムやコンテストでの発表する手法を提案・支援する可能性を含めた活動を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度終了時に未使用額が発生したのは、東京都内の多地点気象観測から地域気候特性の分析とデータの活用手法の検討をすすめ、学会等での発表や報告書などにまとめる予定であったが、各地点の標高との関係性に関して分析を進めていく中で各地点の標高や周辺地表面被覆条件をあわせたより詳細な分析が必要と考え、それらの知見も含めた活用手法の提案につなげていくよう計画を変更したことから未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、前述において示した地域気候特性の多変量条件(標高、地表面被覆状態、隣接環境など)を考慮した詳細な分析(追加で購入する測定機器での観測を含む)とデータ活用手法の提案を検討し、学会等での発表・報告書作成を実施するための経費に充てる予定である。
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