本研究課題では、近年細かい観測ネットワークを使ったリアルタイムの気象情報のニーズが高まっていることに着目し、観測密度の高い気象ネットワークを実現するうえで重要な建築ストックである公共建築物(庁舎・学校・公民館など)に気象観測システムを設置・観測し、データをインターネットで共有して観測密度の高い都市及び地域気候分布の分析を行った。また観測データを建築・教育・災害対策・公共交通といった多分野への活用方法を提案し、気候変動や自然災害、社会的ニーズに適応する都市や地域社会を支援する仕組みを構築していくことを目指した。 1.気象観測システムの設置・観測:本研究において利用する気象観測システムを新たに東京都内の都立高校1校に設置・観測を実施した。本地点を加えた都内約30地点の気象データとアメダスデータを利用した観測精度の検証や観測点の周辺環境を比較した。また平成27年度末に観測機器の撤去を行った。 2.東京都内の地域気候特性の分析:都内設置の約30地点のうち、12~14地点を抽出して各種観測データを比較分析し、都内各所の気候特性の違いを明らかにしてこれまで日本建築学会や空気調和・衛生工学会で学会口頭発表を行ってきた。平成27年度では、建物の想定外気熱負荷の地点間比較から省エネにつながる中間期の外冷利用や夏季の外気利用の可能性を確認する知見も含めた内容を日本建築学会において学会口頭発表(審査付)した。 3.観測データの多分野活用に関する活動:大学等の研究機関や高校生・高校教員などが参加した高大連携事業成果報告会において、建築分野での気象データの活用実態や海外での取り組み事例について口頭発表し、気象データの社会的価値と利活用事例を報告してきた。また設置校を含めた4地点の学校担当者を通して観測データの利用方法を紹介し、データ利活用に関する啓発活動を継続的に行った。
|