研究課題/領域番号 |
24760472
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
小笠原 岳 明星大学, 理工学部, 助教 (30516232)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 対流熱伝達率 |
研究概要 |
本研究は、建築居室内を対象とした対流熱伝達率の分布および時間変動を明らかにすることを目的としている。 研究初年度の平成24年度は、対流熱伝達率の算出方法確立を目指し、環境試験室における試験を実施した。本研究では、壁面近傍の空気温度を測定し、得られた温度分布の勾配から対流熱伝達量を推定し、壁面温度を参照空気温度で除して求める方法を採用した。壁面近傍の空気温度測定用装置として、0.1mmピッチでの移動制御が可能な装置を用いた。また計測部には放射熱伝達の影響を極力小さくするため、素線径0.025mmのK型熱電対を用いた。 環境試験室における検証では、まず試験室内を静穏かつ一定温度に管理し、定常状態における対流熱伝達率の算出を試みた。検証では、本研究で提案する手法のほかに、熱流計を用いて対流熱伝達率を算出する手法や、熱工学分野で広く用いられる実験式を用い、それぞれ手法で算出した対流熱伝達率の差異を確認した。壁面および床面を対象に、表面温度を変化させた実験では、表面温度の上昇に伴って対流熱伝達率の値も大きくなり、4.2~5.0W/m2K程度となった。この値は、熱流計から算出した値と概ね一致し、熱工学実験式の値より大きくなった。続いて、温度環境は定常状態を維持し、表面近傍気流を4段階に制御した状況で測定を行い、表面近傍風速の違いによる対流熱伝達率の差異を検証した。その結果、本手法による値と熱流計から算出した値は概ね一致したが、熱工学実験式の算出値は近傍風速が大きくなるほど、差異が大きくなることを確認した。 次に非定常環境を想定した検証を実施した。その結果、表面温度が大きく変化する過程では、熱流計による算出値が応答遅れによって過大に評価されることが確認された。このことから、本研究で提案する手法の有用性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である平成24年度に予定していた環境試験室における検証を当該年度内に完了することができた。それにより本研究で提案する対流熱伝達率の測定手法の有用性が確認できた。よって交付申請書に記載した「研究の目的」通りの進捗状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度実施した環境試験室における検証実験において、本研究で提案する対流熱伝達率の算出手法に一定の有用性を確認したことを踏まえ、本年度は住宅における測定を実施予定である。 冬期における住宅居室の暖房は、対流型空調機(エアコン)によるもののほかに現在急速に普及が進む床暖房も用いられる。室内環境はエアコン暖房と床暖房とでは大きく異なるため、暖房方式別に形成される室内環境について、室内各所の局所対流熱伝達率を算出する。 まず空間温度5℃に制御された人工気候室内に建設された実験住宅内で測定を行う。測定対象居室はエアコン・床暖房設備を備えており、同一居室における局所対流熱伝達率の比較を実施することができる。ここでは、床面・壁面・ガラス面を対象に測定を行い、局所対流熱伝達率の算出を試みる。 次に実住宅を対象とした測定を実施する。実在の住宅居室は、外気温など外気気象条件の変動に追従し、室内温熱環境が変化する。今回はエアコン・床暖房設備を有する実際の住宅居室を対象に、冬期・夜間を対象とした測定を実施する予定である。対象室内部位は床面・壁面・ガラス面とする。 なおガラス面においては、二重窓・単窓の2種類の窓を対象に測定を実施する予定である。 時間的余裕があれば、市販の熱負荷計算プログラムを対象に、対流熱伝達率の違いによる結果の差異について検討を実施したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は人工気候室内の実験住宅内における測定、実住宅を対象とした測定がメインとなる。このため、研究費は実験にかかわる消耗品類の購入を予定している。
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