本研究は、建築居室内を対象とした対流熱伝達率の分布および時間変動を明らかにすることを目的としている。研究初年度の24年度は環境試験室における試験を実施し、本研究で用いる手法の妥当性を確認した。 研究最終年度の25年度は、空間温度を5℃に制御された人工気候室内に建設された実験住宅内での測定を実施した。測定は同一の居室において、エアコン暖房時と床暖房時に実施した。その結果、床暖房時の対流熱伝達率は暖房床面及び天井面が6.6~6.9W/m2Kとなり、高い値となった。床暖房敷設外や窓面・壁面は3.1~3.7 W/m2Kとなり、床暖房面及び天井面より小さい値となった。エアコン暖房時における窓面・壁面・天井面の対流熱伝達率は3.0~3.9 W/m2Kとり、床暖房時よりも高い値を示した。 実験住宅内での測定を参考に、実住宅において、暖房方式別・部位別の測定を実施した。条件が安定した120分間のデータを平均化した非定常状態では、窓・壁においてエアコン暖房のほうが、対流熱伝達率が大きく、床面については床暖房のほうが大きくなった。しかし床面における値の差は0.3 W/m2K程度と大きくなかった。これらの結果は実験住宅における結果と同様の傾向であった。 以上、2年間の研究を総括すると、主たる目標であった局所対流熱伝達率の算出方法の確立については、一定の成果を得たと考えている。但し、表面温度と空気温度に差が無い場合の測定方法など、今後に検討が必要である部分も残した。局所対流熱伝達率の体系的整理については、住宅における暖房方法別(エアコン、床暖房)・部位別の測定を実験住宅や実住宅での測定により主たる部分を明らかにした。最後に、各種シミュレーションの予測精度検証については、十分な検証時間が確保できず、十分な成果を得ることが出来なかった。
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