分析窓長と分析精度の関係について検討した.環境雑音と建造物インパルス応答の畳み込みは,それらのケプストラムの和として表現できる.建造物の雑音振動を一定時間区間(フレーム)毎に観測した場合,環境雑音の振幅ケプストラムはフレーム間で変化する.一方,建造物の劣化は環境雑音の変動に比べて十分緩やかであると仮定すると,建造物における伝達関数の振幅ケプストラムは,概ね一定な直流成分と見なすことができる.従って,時間領域で一般的に用いられるSNR(signal-to-noise ratio)と同じ要領で,観測信号ケプストラムの時間平均を,その標準偏差で除したものは,時不変な建造物のインパルス応答と時変な外部雑音のケプストラム比として考えることができる.ケプストラム比が1より大きければ伝達関数が音源に対して優位であると評価できる.本研究では,ケプストラム比を提案し,それに基づく最適な分析窓長の決定方法を試みた.強度の異なる3種類の模型での実験と実建造物での実験を実施し,提案手法の有効性を検証した.成果は電気音響研究会で報告した.現在,論文投稿に向けた準備を進めている.
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