研究課題/領域番号 |
24760484
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高見 淳史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40305420)
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キーワード | 都市計画・建築計画 / 低自動車依存都市 / アクセシビリティ |
研究概要 |
本研究課題は,人々の「自動車に頼らない生活スタイル」を持続的・安定的に支える観点から,アクセシビリティを踏まえた土地利用と交通の評価・計画手法を確立することを目的としている。平成25年度は次のとおり研究を実施した。 まず,「自動車に頼らない生活スタイル」を持続させるうえで,周辺環境の大きな変化を伴う転居の前後での交通行動の変化について理解を深めるとともに,そのような生活スタイルの実行可能性が高いと考えられる公共交通沿線への居住地誘導を図ることが重要である。この観点から以下の2つの分析を行った。 第一に,当研究室で過去に収集した千葉県・柏の葉キャンパス地区への転居者のパネルデータを用いて転居前後の自宅近隣・遠方における交通手段別の活動頻度モデルを構築し,食事や外食などの活動について近隣でのアクセシビリティの変化が実行頻度に影響していることを明らかにした。 第二に,情報提供を通じた居住地誘導の可能性を検討するため,5つの政令市の市民を対象に,仮想的状況下での居住地選好を問うSP調査を実施した。分析から,将来都市機能の集積する地域を明示する施策だけでは選好に影響しないこと,郊外部における将来の施設撤退や公共交通減便の方針を示す施策が,集積地域での住宅購入に対する金銭的助成よりも強い影響を及ぼすこと,などを明らかにした。 また,東京圏一都三県の居住者(20~70代男女・1000サンプル)を対象に,主要な活動機会へのアクセシビリティニーズ,日常的な生活活動・交通行動の状況,生活環境に対する意識などの把握を目的としたWebアンケート調査を行うとともに,分析に先立ってのデータ整理に着手した。この調査には人々の長期的なライフステージごとの居住地選好・モビリティ選好に関する設問も含めてあり,人が「自動車に頼らない生活スタイル」を持続しようと考えるのか否かを分ける要因の分析が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「アクセシビリティニーズに関するアンケート調査」と「生活活動・交通行動の実態と意識に関するアンケート調査」は一本化して平成25年度内に実施できたが,予備調査の実施を経た調査項目の検討に時間を要し,調査実施がずれ込んだことにより,分析に遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
精査が必要であるが,アンケート調査によるデータ取得は完了したものと考えている。一方で,大規模な交通ネットワークデータの構築と分析にやや困難があり,対象地域をさらに絞るか,外部からデータやツールの購入を行って,遅延を取り戻すことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の「空間データの整備」を東京大学グローバルCOEプログラムの予算で実施できたことと,「アクセシビリティニーズに関するアンケート調査」と「生活活動・交通行動の実態と意識に関するアンケート調査」を一本化して実施したことから,当初計画に比べて未使用の予算が生じている。 追加のアンケート調査の実施,もしくは外部からデータやツールの購入のための費用に充当したいと考えている。具体的な使途は早急に詰める計画である。
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