本研究課題では,「自動車に頼らない生活スタイル」を持続的・安定的に支えうる土地利用と交通の評価・計画・実現に資する手法について,主にアクセシビリティ環境に着目した検討を行った。 平成27年度は,過年度収集したデータを用いて,自宅近隣におけるアクセシビリティに対するニーズの類型化について再検討・確定した上で,種々の個人属性との関係を分析し,ライフステージや現住地特性による影響が強く見られることを示した。また,アクセシビリティニーズと現住地都市化度のマッチング,それと将来の居住地選好・モビリティ選好との関係性を検討した。 加えて,研究期間全体を通じた成果として,(1)過去5時点の全国都市交通特性調査の分析より,若者世代の自動車利用可能性や子同居世帯の自動車トリップ原単位の低下傾向から,三大都市圏で「自動車に頼らない生活スタイル」が広がりつつあるとの示唆を得た。(2)全国諸都市の拠点への商業・医療集積と拠点間公共交通の現状を横断的に把握し,集積や公共交通サービスの水準が劣る地区でも都市マスで拠点に位置付けられがちな傾向が,特に小規模都市で見られることを明らかにした。(3)公共交通沿線の「まちなか」地区への居住誘導の可能性を探るため,将来のアクセシビリティ環境に関わる沿線居住のインセンティブ/非沿線居住のディスインセンティブの付与と提示が居住地選好に与える影響をSP調査に基づいて分析し,後者の影響も有意かつ条件にもよるが前者より大きな影響を及ぼしうることを示した。(4)鉄道駅周辺への実際の転居が近隣での活動に及ぼす影響を転居者パネルデータから分析し,買物や外食について徒歩圏でのアクセシビリティの変化が実行頻度に有意に影響していることを明らかにした。 以上,各種データの分析を通じ,「自動車に頼らない生活スタイル」と都市構造,アクセシビリティに関し一定の知見を得ることができた。
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