研究課題/領域番号 |
24760487
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
菊地 吉信 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30334808)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | セルフ・ヘルプ・ハウジング / 空き家 / イギリス |
研究概要 |
本研究の目的は,イギリスにおけるセルフ・ヘルプ・ハウジング(Self-Help Housing)の取り組みに着目し,優れた活動を実践している団体を現地で調査することにより得られた知見を基盤としてわが国への応用の可能性を検証することである。研究計画は平成24,25年度の2カ年で構成されており,このうち平成24年度は,まず関連文献やインターネットによる基礎的な情報の収集を行った後,事業の中核を担う活動団体の運営者を対象として活動内容についての聞き取り調査を行う。次に,これにより得られた知見を基盤として,事業に関係する自治体担当者や関連団体等に聞き取り調査を実施し,立場の異なる主体が果たす役割と事業実施の際の連携の実態を明らかにすることとした。 この計画に従って情報収集を行う中で,イギリス政府が平成24年から全国(ただしスコットランドおよびウェールズを除く)の空き家対策に巨額の補助金を支出することがわかった。平成24年4月~8月の間に計1億ポンド(約150億円)の補助金が95団体に分配され,さらに平成25年にも第二回として計7500万ポンド(約112億円)の補助が決まっている(受給申請は3月,現在審査中)。多くの団体が新たに空き家対策に取り組み出しており,さらにその中には本研究が着目するセルフ・ヘルプ・ハウジングを行う団体も複数含まれることが判明した。 こうした状況の中,平成24年10月にイギリスにて数カ所の事業を実見するとともに研究協力者であるバーミンガム大学の研究者と研究の方向性について議論したところ,多様かつ新たな動きが生まれているので,調査対象を広げたほうが良いとの助言を得た。 検討の結果,研究計画を一部見直し,平成24年度は空き家対策を行う団体のデータベースづくりと関連制度の動向を把握することに傾注することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では平成24年度中に活動団体の運営者に対する調査をあらかた済ませる予定であったが,上述のとおり調査対象であるイギリスの状況が大きく動いていることから,研究協力者の助言を得ながら情報収集とデータベースづくりを進め,調査対象とする団体の抽出を行うこととした。しかしながら,イギリス政府の第二回補助金を受給する団体はいまだ公表されていないため,データベースは現時点で完成には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように研究計画の見直しが必要と判断した。すなわち,イギリスで空き家対策に取り組む団体の特徴をデータベース化し,それを基に本研究の目的にふさわしい対象団体を改めて抽出した後,実地調査を行うこととした。実地調査は平成25年7月~11月に集中的に行う。 当初の研究計画よりも進捗は遅れるが,これは申請者が平成25年6月からの半年間,イギリスのバーミンガム大学に客員研究員として滞在することとなったためであり,日本にいるよりもはるかに効率的に研究でき,かつ大幅な進展を実現することが確実に見込める。また,当初の計画において調査対象としていた団体にも事情を説明し,平成25年も引き続き協力を得られることは確認できている。 平成25年度は,改めて作成する活動団体のデータベースに基づき,調査対象団体の抽出を行い,現地においてセルフ・ヘルプ・ハウジングを行っている団体の運営者および関係者への調査(7月~9月),さらに,空き家改修や若者のトレーニング事業に参加して実際に修繕後の住居に住んでいる人々を対象とした聞き取り調査(10~11月)を実施し,事業に対する評価,住居の状態と評価,住居費負担等を明らかにする。 帰国後,現地調査により得られた知見をまとめ,セルフ・ヘルプ・ハウジングが事業として成立するメカニズムを明らかにする。その上で,わが国においてセルフ・ヘルプ・ハウジングによる修繕事業を応用する可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
イギリス渡航に伴う海外旅費と補助作業謝金が中心となる。
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