研究課題/領域番号 |
24760488
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
太幡 英亮 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00453366)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | コミッショニング / 建築コミッショニング / 建築計画 / 大学施設 / 性能検証 |
研究概要 |
(1)従来のコミッショニング・ガイドラインや実践事例の整理・・・日米両国で発行されたガイドラインと関連書籍・論文を収集し、整理するとともに、本研究の位置づけを明確にした。設計プロセスに関する既往研究や、FM、CMといったより一般的なマネジメント手法を参照しつつ、それらとコミッショニングの関係と差異を整理した。 (2)総合研究棟を対象とした「企画~設計段階」の建築コミッショニングの整理と検証・・・これまで試行的に実践してきた建築コミッショニングの過程を整理し、問題や更なる可能性を明らかにした。OPRをはじめとした全ての発行文書の整理とそれが反映された設計図書の確認を通じて、企画~設計段階における建築コミッショニングの価値と、問題、展開の可能性などについて分析した。文書調査だけでなく、発注者・設計者等関係者へのインタビューも実施した。 (3)総合研究棟を対象とした「施工段階」の建築コミッショニングの試行と検証・・・平成24年度は、総合研究棟の施工段階であったため、施工段階のコミッショニングの実践を行った。設備コミッショニングとともに、研究代表者は建築図に関連する部分において主導的にコミッショニングを行った。実践を通じて、建築コミッショニングの検証対象、検証方法、検証上の問題などを分析している。また、コミッショニングの効果と可能性を考察している。 (4)ES総合館でのレトロ・コミッショニング・・・平成23年に竣工し、企画~施工時にコミッショニングが行われなかったES総合館において、特に建築計画的視点から運転管理段階のコミッショニングを行った。例えば照明計画など、エネルギーの側面だけでなく、計画・意匠の側面も加味した、包括的性能検証を試みた。具体的には、実測、被験者実験や、行動観察、インタビューといった手法を用いた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発注者の求める建築性能が入居後に実現されるよう、企画から運転段階まで確認・検証する「コミッショニング」の手法は設備分野で導入されつつある。しかし実際「建築」の性能は、空調・照明設備だけでなく計画・意匠・構造含めた「建築全体」として作り上げられるものであるから、特に「計画・意匠」の側面を含めたコミッショニングが求められる。本研究は、建築(計画・意匠)分野のコミッショニング手法を構築し、実践を通じてその価値を明らかにすることを目的としている。 具体的には、大学施設における建築コミッショニングの実践を通じて、「企画~設計段階」における建築コミッショニングの課題と可能性については、国内外の学会においていくつかの報告を行い、現時点では整理することができた。 また、「施工~受渡し段階」においては、実践の中でいくつかの課題が明らかになりつつあり、同時に、施工段階で建築計画的視点、音環境や光環境、空気環境との総合的観点からの検証が必要となってきたことと、その検証を可能な範囲で試行することができた。今後、その意義が分析され、考察される段階にある。以上をもとに、今後さらに査読論文等にまとめる段階で、成果を再構築をしていくことが必要である。 さらに、計画視点からのレトロ・コミッショニングの実践を通じて、研究-実践を繋げるいくつかの知見が明らかにされ、新築建物との相互比較等を行える段階にある。 細分化した研究成果の統合的な実践活用の可能性を探るプロセスとしては、建築学会の研究懇談会で発表するなど、多くの議論の場をつくる中で、手法構築のための議論の展開を行っており、今後も継続したい。 一方、米国を中心とした海外事例のレビューについてはやや遅れており、次年度の課題となる。
|
今後の研究の推進方策 |
(5)日米事例の視察とインタビュー調査・・・米国において、現在の状況を確認する。最初にガイドラインを発行たASHRAE、「外装のコミッショニングガイドラインを発行したNIBS、コミッショニングのコースを持つウィスコンシン大学等の視察によって、最新の情報収集を行う予定。日本においても、先進的にコミッショニングを採用した幾つかの事例を対象に、発注者、CAおよびCMT、設計者、施工者にインタビューを行い、導入経緯や実践の問題、現状の課題などを明らかにし、日米ともにコミッショニングの実践建築の視察を合わせて行う。 (6)総合研究棟を対象とした「運転段階」の建築コミッショニングの試行と検証・・・総合研究棟の運転段階の建築コミッショニングを試行する。建築計画的側面からの空間の印象評価や、行動観察とともに、空間の寸法の実測、照度測定、遮音性能測定、温室度測定などを行い、総合的な視点から検証を行う。例えば照度の運転段階の適正な照明チューニングにつながるための手法の検討など。運転段階で重要なのは、季節ごとの違いを把握することであると考えられる。空調の運転状態やエネルギー消費が大きく異なるとともに、建築の使い方も変動するため、設計当初の想定との違いやそれに対応したチューニングの可能性など、調査事項は多い。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究遂行の際に、予定していた旅費の使用が発生しなかったこともあり、次年度使用額が生じている。25年度は、国内外への調査を予定しており、さらに24年度に十分に行えなかった国内の成果発表および打ち合わせのための旅費とする計画である。
|