研究課題/領域番号 |
24760488
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
太幡 英亮 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00453366)
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キーワード | コミッショニング / 建築コミッショニング / 建築計画 / 大学施設 / 性能検証 |
研究概要 |
○これまでの成果により、論文発表及び、愛知環境賞優秀賞の受賞、名古屋市の環境配慮事例集トップページ掲載など、評価を得ている。 ○総合研究棟を対象とした「施工段階」の建築コミッショニングの検証・・・平成24年度に行った施工段階のコミッショニング実践をもとに、その検証を行った。それにより、施工段階で為しうる事項、施工段階では対象にならない事項が明らかになってきた。例として、「施工してみないと性能が検証できない事項」、「施工状態が性能に大きく影響する部位の施工状況確認」、「実使用材料の環境性能のリスト化」、「同性能を確保してより安価・効果的な手法の施工時での導入内容」などである。また施工段階でのコミッショニング参加者の意識調査を行い、設計時と比較し、立場により生じやすい意識の食い違いを確認した。 ○総合研究棟を対象とした「運転段階」の建築コミッショニングの試行と検証・・・24年度末の総合研究棟竣工を受け、運転段階の建築コミッショニングを試行するとともに、その検証を行った。建築計画的側面から、特にOPRの目標の一つを実現するための、研究者間の交流行動の誘発について、行動観察とインタビューを実施した。これは入居後はじめて検証可能となる事項である。結果、目標通りの効果が得られた空間的工夫もあり、例えばパントリーの会話に繋がる効果等が確認された。また、入居者同士の社会的関係の違い(2フロアの比較)の影響・空間との関係、研究者の意識が明らかにされた。 ○他の研究施設との比較による運用状況の調査と検証・・・本コミッショニングの対象施設の行動観察調査とあわせ、国内の先進事例、学内の特徴的事例の比較分析を実施した。それにより、今後の建築コミッショニングのための検証基礎となる知見が得られた。具体的には、平面計画のモデル化と、共用空間での交流行動の生じ方に関する考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発注者の求める建築性能が入居後に実現されるよう、企画から運転段階まで確認・検証する「コミッショニング」の手法は設備分野で導入されつつある。しかし実際「建築」の性能は、空調・照明設備だけでなく計画・意匠・構造含めた「建築全体」として作り上げられるものであるから、特に「計画・意匠」の側面を含めたコミッショニングが求められる。本研究は、建築(計画・意匠)分野のコミッショニング手法を構築し、実践を通じてその価値を明らかにすることを目的とし、これは、細分化した研究成果の統合的な実践活用の可能性を探るプロセスでもある。 25年度には、施工段階のコミッショニングの分析が予定通り実施され、運用段階のコミッショニングが試行されたとともに、その検証もほぼ実行されている。さらに、他大学の先進事例や、学内の特徴的事例など、他の施設での運用状況調査(行動観察)を実施でき、当初目標からさらに研究展開をする事ができた。設計と研究をつなぎ合わせる建築コミッショニングの手法構築を見据えた興味深い知見が得られている。 一方で、海外事例の視察とインタビュー調査については、実現できておらず、海外事例のレビューも遅れたままとなっている。国内の他事例の調査も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
○日米事例の視察とインタビュー調査 米国において、現在の状況を確認する必要がある。最初にガイドラインを発行したASHRAE(米国冷凍・空調協会)への調査、外装のコミッショニングガイドラインを発行したNIBSへの調査、コミッショニングのコースを持つウィスコンシン大学の視察によって、最新の情報収集を行う。日本においても、先進的にコミッショニングを採用した幾つかの事例を対象に、その発注者、CAおよびCMT、設計者、施工者にインタビューを行い、導入経緯や実践の問題、現状の課題などを明らかにする。また、日米ともにコミッショニングの実践建築の視察を合わせて行う。 ○プロセス全体の包括的視点からの分析 25年度末までに、企画から運転に至る各段階での建築コミッショニングが試行された。したがって、今後、コミッショニングプロセス全体を振り返り、各段階での性能検証のモデルを整理するとともに、その効果と問題点、今後の可能性を明らかにする。各段階の当事者(発注者、設計者、施工者、運転管理者)への継続的インタビューによって、従来の、各段階で当事者が異なることの生む問題を明らかにすると同時に、建築コミッショニングという手法の価値もまた示すことができるのではないか。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の主要学会大会開催地が研究代表者の所属大学であった事、また、2年目に予定していた国外調査が実施できなかったため、旅費に未使用額が生じている。 また、研究分析補助、研究協力において謝金が十分に使用できず、未使用額が生じている。 次年度は、国内外の事例調査とインタビュー及び、コミッショニングプロセス全体の統合的分析を行う予定である。そのため、旅費については、次年度の国内の学会発表、国内外調査旅費として使用する予定であり、現在国外調査計画を立案中である。 また、次年度は最終年度として分析補助および、研究協力を早期に依頼し、分析補助のための物品購入を行い、それをもって学会等に発表できる成果をまとめ、論文投稿などを実施予定である。
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