研究実績の概要 |
2014年度は、建築物単体から都市空間までをスケーラブルに扱うことができる避難解析システムを大阪梅田地下街の浸水被害を想定した避難シミュレーションに適用し、大規模可視化装置を用いて避難状況を把握できるシステムを構築した。大阪梅田地下街は、大阪市立大学が作成している詳細な3Dモデルを使用し、避難シミュレーションを重ねあわせた結果を可視化して、避難安全対策の立案・検討や、防災教育を多人数で議論できるような環境を構築している。大規模可視化装置上では、11,520×4,320ピクセルの高精細映像をリアルタイム(60 fps)で処理してインタラクティブな操作が可能とし、俯瞰視点と一人称視点の間を自由に切り替えることで、異なる視点で地下街の避難安全性を検証することができる。俯瞰視点では、高さ約2.5 m、幅約6.5 mのディスプレイを用いたことで、東西約1.1 km、南北約1.1 kmの梅田地下街全体を500分の1のスケールで表示でき、高解像度映像により、地下街全体を表示しても個々の人間の避難状況を把握できる。一人称視点は、大阪梅田地下街3Dモデルをほぼ実物大で表示し、壁一面にある高精細ディスプレイの効果によって、実際にその空間にいるような臨場感は体験することができる。 また、避難解析システムにおける人間の動きを精緻化するための基礎研究として、VR技術を用いたウォークスルーシステムにより、人間が建築空間内を移動するときの頭の動きや、視覚的シークエンスの分析を行った。ディスプレイ装置には、ヘッドトラッキングセンサーが付属した広視野型のヘッドマウントディスプレイを利用することで、ユーザの頭の動きとその視野空間の関連性について分析を行った。その結果、視野空間の開放性やその方向性など空間のシークエンスを定量的に評価し得た。
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