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本研究では，津波の浸水区域で発生する火災（津波火災と呼ぶ）に対し，津波避難ビルに滞在する避難者の人命安全を計画する手法の構築を将来的な目標に掲げ，この手法構築に資する知見・技術・基礎データの整備・探索を目的とした。初年度は，2011年の東北地方太平洋沖地震津波において，津波火災の影響を受けた津波避難ビルの事例を収集し，津波避難ビルにおける火災被害の特徴や人命危険シナリオを把握した。また，津波避難ビルの火災危険を評価する上で重要な津波火災の燃焼性状に着目し，海面に浮遊する重油と瓦礫が一体的に燃焼する火災を模型スケールで再現し，発熱速度や燃焼時間に関するデータを収集した。次年度では，津波火災により津波避難ビルが類焼した場合を想定し，下階に類焼した火災を上階の避難安全階まで延焼させないことを考え，津波火災により類焼した津波避難ビルの上階延焼危険性を把握するための模型実験を行った。ここでは，津波火災が津波避難ビルに漂着し建物の一室に類焼した状況を，原型の1/10に相当する模型で表現することで，燃焼速度や区画内温度といった屋内の火災性状の測定，屋内と屋外の両火災によりもたらされる外壁付近の温度分布の測定，および，開口噴出火炎の観察を行った。最終年度では，こうした実験的検討を踏まえ，津波火災に対する津波避難ビルの安全計画のあり方を整理し，津波避難ビルの指定や設計にあたって留意すべき11の計画ポイントを提示した。また，南海トラフ地震津波による浸水被害が予想される特定の自治体を対象に，既存の津波避難ビル18棟の現地調査を行い，津波火災に対する安全性の実態を定性的に評価するとともに，今後の検討が必要な課題を洗い出した。
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