研究実績の概要 |
昨年度に開発・改良を終えた、「BIMCADを用いて構築した部材属性情報を持つ3Dモデル(建築情報モデル)を、施設維持管理業務において活用する」ことを支援するウェブシステム(以下、BIMFMシステム)を、その実践的な評価を目的とし、東京都内に実在する延べ床約9,000m2のある企業の新築本社ビルにて運用した。夜間以外常駐するビル管理会社の担当者(1名)が、日々の各種点検・巡視結果を入力し、BIMFMシステムを約1年間運用した(現在も運用は継続中である)。 運用結果を評価するため、当該ビル管理担当者へのヒアリング及び運用過程の観察結果から、以下のことが明らかとなった。 1)3Dモデルによる維持管理情報の閲覧は把握しやすさにおいて一定の効果は認められた。しかし、携帯型端末を使った3Dモデルの操作は困難であり、オンサイト(維持管理現場)における利用には不向きであった。2)関係主体間の維持管理情報の円滑な共有に効果を発揮した。しかし、施設規模が小さく管理者非常駐の場合や施設規模が大きく複数のビル管理担当者常駐の場合に、より有効であることが明らかとなった。3)点検・巡回報告書が自動作成されることから、管理業務の効率化とペーパレス化、ビルオーナーとの情報共有に寄与することが明らかとなった。4)維持管理を目的とした建築情報モデルのLOD(Level of Detail、精緻さ・詳細さ)を提案することができた。5)維持保全情報(主に設備)と運用管理情報(センシングによる室内環境情報の自動取得、室利用)を一元化できた。 なお、本研究で開発したシステムは、維持管理情報を一元化し、共有するための情報プラットフォームを構築したにすぎない。今後、本システムのさらなる機能拡充(3Dモデル操作性の向上とビッグデータの分析・作業示唆)と運用により、コスト削減の客観的評価と新たな負荷価値を提供する必要がある。
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