研究課題/領域番号 |
24760497
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
川田 菜穂子 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (90608267)
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キーワード | 住宅政策 / 住宅問題 / ジェンダー / 離婚 / 配偶関係 / 国際比較 / イギリス / EU諸国 |
研究概要 |
戦後日本の住宅システムは、男性稼ぎ主が持家を取得することを前提として成り立ち、大きなジェンダー不平等を内包してきた。しかし1970 年代以降、日本においては、結婚や家族のあり方が大きく変容し、離婚の増加が顕著である。このような背景のもと、住宅の所有形態、アフォーダビリティ(住居費負担)、資産形成、物的水準などの住宅条件に関して、不利な状況におかれる離別女性が増えている。本研究は、日本と異なる住宅システムとジェンダーの傾向をもつ欧州諸国を比較対象として、離別女性の住宅経歴の実態分析を行うところから、日本の住宅システムの実態と課題を、ジェンダーの視点から明らかにしようとするものである。 平成25年度は、既往研究や政策資料のレビューを継続し、主として日本、イギリス、フランスの住宅システムの特性をジェンダーの視点から分析した。とくに夫婦財産制や財産分与に関する論点の整理を行い、それらのあり方が、離婚後の女性の住まいにどのように影響するのかを検討した。 また、昨年度にひき続き、日本に関しては国勢調査や住宅・土地統計調査などの公刊集計、全国消費実態調査の匿名データ、欧州諸国に関してはLIS Cross-National Dataの独自集計結果等を利用して、住宅条件の比較分析を行った。各国とも住宅条件にはジェンダー差があり、とくに母子世帯を形成する離別女性が不利な状況におかれる傾向がみられるが、日本ではよりそれらの状況が顕著であった。また、女性の貧困の解消において、とくにフランスやイギリスでは住宅政策を通じた再分配が大きく影響していること、日本においてはその効果が極めて小さいことなどを実証することができた。 さらにイギリスについて、世帯パネル調査(BHPS)のミクロデータを利用し、離婚前後の住宅経歴に関する詳細な分析を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、全国消費実態調査の匿名データ分析、LIS Cross-National Dataやイギリス世帯パネル調査のミクロデータ分析など、国際比較を可能にするための独自分析・集計を精力的に実施した。また2013年7月には、有識者へのヒアリングを実施し、イギリス現地調査の実施に関する有益な助言を得たことで、具体的な調査内容を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、イギリスにおいて、離別女性を対象した現地調査を予定している。本調査では、結婚から現在までの家族、住宅、就労、家計などの状況と離婚時の財産分与、住宅に関連する制度利用の利用経験等について、より具体的に把握する。現地でのインタビュー対象者確保が厳しい状況に備えて、質問紙と電話によるインタビューの実施など、複数の調査手法を検討したい。 また、これまでの離別女性の住宅経歴に関する国際比較分析のまとめとして、住宅システムとジェンダーに関する理論の検討を行い、先進諸国のなかでの日本の位置づけを明らかする。また、日本について、離別女性の住宅条件不利を克服するための住宅システムの課題を抽出し、具体的な政策提言を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度末に計画していた現地調査を平成26年度に実施することになったため。 本年度は、学会発表、有識者へのヒアリング調査、および海外現地調査等に関わる旅費を多く支出する予定である。その他、図書や論文の購入費、現地調査や論文発表にともなう英文校正費、調査実施や資料整理等に関わる謝金、文房具やトナー等の消耗品等の支出を計画している。
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