本研究は、住戸内の構造壁・梁を撤去することによって、昭和40年代に建設された壁式構造の公共集合住宅ストックを、現在の住要求に適合した住宅として蘇らせる技術を開発することを主要な目的としている。これらの集合住宅の改修に際しては、戸別改修技術の開発が望まれており、本研究で目指すのも、戸別改修が可能な既存構造躯体撤去技術の開発である。 平成24年度は、①本研究で開発する構造壁・梁撤去技術を、現実に適用可能なレベルにまで高めるとともに、②実際の公共集合住宅の一住戸を対象とした改修計画を策定することによって、技術的な課題を明らかにした。また、ここで策定する改修計画は、内装・設備 の更新計画まで含んだものとし、適切なコストで住宅のトータルとしての価値・魅力を最大限高めるための、最適な要素技術の組み合わせを明らかにした。 平成25年度は、③平成24年度に策定した改修計画を、詳細設計レベルまで発展させた。さらに、この計画に基づき、④法規・建設コスト・維持管理コスト等の観点を含んだフィジビリティスタディを実施した。また、集合住宅の大規模改修事例を30事例程度収集し、そこでの改修ニーズや適用された改修技術の整理を行うとともに、これらの事例に対して、本研究で開発した技術が適用可能かどうか検証を行うことによって、開発した技術の評価を行った。さらに、本研究自体のプロセスの分析を行い、ストック活用時代の建築設計・生産管理のあり方について考察を行った。 以上により、新たに開発を行った戸別改修による既存構造躯体の撤去技術を中心としながら、既存の集合住宅ストック活用技術を体系的に位置付け、総合化した改修手法を提示することができた。
|