研究課題/領域番号 |
24760506
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
山田 義文 東洋大学, ライフデザイン学部, 助手 (80584375)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 新潟県中越地震 / 高齢者 / 居住環境 / 復興公営住宅 / 仮設住宅 / 福祉サービス |
研究概要 |
2012年度前半は、中越地震時の仮設住宅の計画と運用に関して文献調査と開設当時に計画等に携わった有識者に対しヒアリング調査を行った。その結果、中越地震の仮設住宅の計画は阪神淡路大震災の時に深刻となった孤独死をはじめとした運用実態における様々な問題点を回避すべく検討を重ね、有機的で質の高い居住環境の構築に至った経緯が明らかなった。特に注目されるのが仮設住宅団地における共用空間の計画特性と利用実態である。東日本大震災の被災地の仮設住宅でも、この計画特性が継承されているが、コミュニティの円滑化に関しては中越地震時と比較すると改善すべき問題が顕在化している。山古志地区における支援員など、コーディネートを行う人員配置なども同時に行う必要性が認められた。 2012年度後半は、新潟県中越地震の被災地の新潟県長岡市山古志地区に建設された復興公営住宅の使われ方と地域居住継続に必要な福祉サービス等の利用状況及び日常生活圏域に関してアンケートと訪問調査を実施した。復興公営住宅の住民は貧困の高齢者が大半を占める。畑を持つ人は多く、畑仕事を毎日の日課とする人が多いが、冬季は雪の影響で畑仕事ができず、外出頻度が著しく減少する。調査結果を分析すると、住民は生活に必要なデイサービスやショートステイ、ホームヘルパーなど福祉サービスを利用しながら費用を抑えた独自の工夫を住宅に施しながら生活を継続している。さらに、6次産業に参加せず、車を運転できず、親族による定期的な訪問支援を受けられない者の日常生活圏域は非常に限定されるという状況も明らかとなった。こうした住民が独居となり要介護度の上昇が進むと、復興公営住宅での生活の継続に限界を迎え、施設等へ転居を余儀なくされ退去に至るプロセスが判明した。復興住宅の配置に関しては、コミュニティを考慮する点に加え、福祉サービスの提供拠点との位置関係も踏まえた計画が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山古志地区の復興公営住宅の住民に対するアンケート調査では、調査票回収率が約6割に達した。訪問・ヒアリング調査についても3割弱の住民に協力していただいた。調査時に入居したばかりで居住環境に対する評価を得られなかった世帯や日程の関係で調査実施に至っていない数事例については、今年度改めて調査依頼を行い、調査を行う必要がある。また、冬場の居住環境に関しては、残雪が消えた2013年度前半頃に改めて実態調査を行う必要がある。また、復興公営住宅の入居状況に関しては、開設から2012年12月末までの段階の状況は把握しているが、その後の推移については最新の状況を長岡市山古志支所等で確認を行い、これまでの調査データに追記する必要がある。よって、2013年度は東日本大震災における被災地の仮設住宅を対象とした調査が中心となるが、2012年度に得られなかったデータを得るため山古志地区における調査も並行して行う。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、新潟県長岡市山古志地区における復興公営住宅における使われ方や住民の生活圏域の変動に関して季節ごとに定点的な調査を行う。また、2012年末に新たに若年層の入居者も見らており、居住環境と産業とのかかわりを中心とした訪問調査も計画している。今年度の研究の中心は、山古志地区の調査で得られた知見を東日本大震災の被災地における仮設住宅での住まい方と比較し、住環境の問題点を整理することにある。比較対象として、山古志地区と同様に震災発生時に福祉的支援を提供する施設が十分ではなかった大船渡内を選定し、仮設住宅住民の住環境に対するニーズの把握、地域での生活を継続する上での工夫、震災後に新規で要介護認定を受けた人の福祉サービス利用状況を把握するための調査を実施する。福祉的なサービスの中でも住環境に関連した福祉用具の利用状況、ホームヘルプサービスの利用状況については、山古志の事例と比較し、地域特性や住宅形式の違いが利用状況に反映される要素があるか分析を進め、今後の仮設住宅及び復興住宅の計画に資することを目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
新潟県山古志地区及び東日本大震災の被災地を対象としたアンケート調査、ヒアリング調査を行うため、アンケート実施時の郵送費、現地調査時に必要となる旅費・交通費として大半の研究費を利用する。その他、調査結果のデータ整理や分析時に必要となる消耗品費や研究成果物制作時に図版等を制作する際の補助作業費や学会への投稿料に使用する。
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