最終年度の平成25年度は、まず、新潟県中越地震で被災した長岡市山古志地区における災害復興公営住宅を対象とした現地調査を継続し、その成果を日本建築学会第8回住宅系研究報告会住宅系研究報告会の査読論文としてまとめた。本研究では、①山古志地区において集落単位に災害復興公営住宅を計画した意義、②集合住宅タイプによる災害復興公営住宅の高齢入居者への受け入れられ方、③高齢化対応として生活階を1階に集約することに対する評価とその他福祉住環境の視点から見た課題について、入居者の住まい方を類型化することから明らかにした。本研究で示した入居者の住まい方に関する類型結果のうち、「1階完結型(寝室・接客分離型)」と定義した事例の台所の使われ方から、生活階を著しく1階に集約すると住環境の低下をもたらすことが確認できた。現在の入居者の年齢構成から判断すると、階段部分が現状のままであれば、洗濯物干し場所も含めた生活スペースの1階への集約化が促進し、住環境の質の低下が進むことが予見される。同時に、東日本大震災の被災地において、早期に竣工した災害復興公営住宅のうち、山古志地区における事例とプランに共通点が見られる岩手県大槌町大ヶ口災害復興公営住宅において、計画経緯や、住まい方、運用状況等に関する現地調査を行い、山古志地区における事例と比較した。大ヶ口地区における場合も入居者の高齢化率はすでに50%を超えており、①集合住宅タイプの住環境に入居者が不慣れなことに伴う問題、②集会所など共用空間の運用上の課題が山古志地区における事例と共通して把握できた。今後、大ヶ口地区においても入居者の高齢化が促進する。住環境の質を維持するため、住民の外出行為を妨げないための共用空間の環境改善実施と住居の空洞化を見越した弾力的な運用方法の早期検討が求められる。
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