研究課題/領域番号 |
24760508
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
木川 剛志 福井工業大学, 工学部, 准教授 (50434478)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換(大韓民国) / スペース・シンタックス / 都市形態学 / 都市カーネル / 都市エントロピー |
研究概要 |
本研究では、都市カーネル理論の構築とともに、その理論に基づいた都市解析手法を提案することを主たる目的としている。そのために当該年度においては、日本における空襲によって破壊された地方都市、そして海外で、日本人が移住した歴史がある都市の現地調査を行った。海外都市については、次年度以降へ考察はまわし、当該年度においては日本の事例を中心に考察を行った。 日本の都市は、江戸時代にその基盤が整備され、明治期に近代的デバイスが挿入され、大正期から戦前までに拡大期を迎える。第二次世界大戦末期の空襲によって、都市が破壊されても、多くの場合、基本的な都市形状は引き継がれて復興された。その原因としては、復興への性急な要望とともに、景観的な復興や地権者の問題など、新しくスクラップビルドを行うことを阻害する儀礼的な要因があげられるだろう。結果として、この儀礼的な再構成要素は、中心部の近代化を妨げ、今日まで現代都市における都市問題の理由となっている。 この発展のプロセスを理解するために、空襲の被害となった都市、福井、長岡、敦賀 富山を事例とし、文献調査とあわせて、スペース・シンタックスを用いて分析した。解析の結果、それぞれの街が、生成、拡大、破壊、復興のプロセスを経ながらも、独自の展開を見せた事がわかる。福井と富山においては、前者はその構成パターンをほとんど変えなかったのに対して、富山は既存の商業地の場所は引き継ぎながらも大胆な都市計画街路を挿入したことがわかった。それらに対して長岡は、江戸期に大きな破壊を受けていたので、明治時代にすでに近代的な都市計画網を持ち、空襲によってそれを大きく更新しなかったことがわかる。また、敦賀に関してはその規模が小さいゆえに、福井と同様に大きな変化がみれなかったことがわかった。 このような解析結果は次年度以降にさらに考察し、都市カーネル理論の構築につなげる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「数理的都市解析」「都市カーネルの理論化」「記憶の中の都市像抽出」の三本柱で研究を進めており、それぞれ、初年度としては概ね計画通りに研究は進んでいる。 初年度に発表した研究成果としては、査読のない学会支部での発表に留まっているが、Space Syntaxでは最も重要な二年に一度の国際学会にこれらに関する論文は提出し、現在、Abstractの審査を通過し、Full Paperの原稿準備中である。この論文では、福井、長岡、敦賀、富山といった空襲を経た街が、どのように復興をしたのか、その際に、戦前の儀礼的都市形成パターンがいかに景勝されているか、を分析している。また、それ以外でも、二年度以降に予定していたソウル市の予備調査も行うことができ、大韓民国において研究協力者と研究についての議論を行うことができている。また、実際の戦前を経験している方へのインタビューも映像撮影も含めて、順調に進んでいる。ただし、理論と同時に進行することを計画していた解析ツールの開発については、そのアルゴリズム開発のためには理論が先行する必要があるため、順調には進んでいない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
二年目においては、まずは現在提出中の論文、申し込み済みの国際学会等において、都市カーネル理論の概念について発表し、その議論を通じてよりインパクトのある理論へと構築を目指す。そのために、5月に韓国で開催されるKIEAEや10月末に開催されるSpace Syntax International Symposiumなどを積極的に活用する。その一方で、戦前の都市像の文献調査とインタビューをさらに重ねる。特に長岡、富山については現地調査とインタビューを重点的に行い、福井との比較検証を行える段階にまでデータを収集する。海外都市については、地図データの収集が初年度に進んでいるので、それをSpace Syntaxによって分析し、データベースの充実を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在まで、研究解析ツールとしては、MacベースのAxmanを使用してきたが、Space Syntaxの潮流としてWindows ベースのDepthMap、GISのソフトをつかったConfeegoが主流となってきているので、Windowsによる解析環境を整備する。また、アルゴリズムの構築にも、これまで手計算によって行ってきたが、Mathematicaを導入し、より高度な演算を行えるようにする。このような解析環境の整備とともに、地図データの収集、現地調査、そして学会発表に旅費を使用する。
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