研究課題/領域番号 |
24760516
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
守田 正志 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 東工大特別研究員 (90532820)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トルコ共和国 / イスラーム / 墓廟建築 / 東部アナトリア / 中央アナトリア / 建築技術 / 外部構成 / 内部構成 |
研究概要 |
本調査研究の初年度に当たる平成24年度は、研究対象地域であるトルコ共和国の各地において、現存する墓廟建築の悉皆調査ならびに現地研究協力者との研究・調査打ち合わせ及び調査許可関係の調整を実施した。調査内容は、以下の通りである。 ●2011年10月に発生したトルコ東部地震による墓廟建築遺構の被害調査のため、写真撮影・ビデオ撮影・平面実測を中心にワン湖周辺(ワン、アフラト、エルジシュおよびその近郊)において、約15棟の墓廟の調査を2012年9月(約2週間)に実施した。また、トルコ共和国大統領府災害危機管理省との調査協力について折衝し、平成25年度からの調査実施に向けた準備を行った。 ●写真撮影・平面実測を中心にトルコ中央部(クルッカレ、クルシェヒル、カイセリ、コンヤ、アフヨンおよびその近郊)において、約50棟の墓廟の調査を2013年3月(約3週間)に実施した。 上記の現地調査から当該地域における遺構の状況を把握するとともに、いくつかの遺構では文献において不明であったクリプトの有無や内部架構の詳細を確認した。また、調査から得られた写真データおよび実測データに基づく平面図から、遺構ごとに、建築外部構成・内部構成の整理を進めた。本調査において、トルコ共和国東部ならびに中央部に現存する墓廟を概ね調査し終えた。 調査データを基に、これまでのデータベースを更新し、クリプト構成の検討を推進するとともに、外部構成の検討に着手した。 なお、上記の調査研究成果の一部は、2012年度日本建築学会関東支部研究報告集等において報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査に関して、本年度は2回調査を実施したが、そのうちの1回は日程の都合上、トルコ西部での調査予定を変更し、トルコ中央部で実施した。この変更は、本年度と次年度の調査の順を入れ替えただけであり、研究計画全体に影響を及ぼすものではない。また、トルコ中央部での調査では、本来の予定していた約30棟を大幅に上回る約50棟の遺構について調査を実施できたことから、データの拡充においては当初の計画以上に進展しているといえる。 データ分析に関して、予定通りクリプト構成の分析を着実に進めている。一方、外部構成の検討、特に基壇部において、未調査の遺構についてはこれまで文献から得た情報を基にデータベースを作成して分析を進めてきた。今回の調査によって、近年修復された遺構の現状を数多く把握でき、修復が創建時の形状を維持しているかなどの検証を含め、データベースの大幅な更新が必要となった。それに伴い、外部構成の分類指針の再考を進めている。 以上から、現在までの達成度としては「おおむね順調に進展している」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
●調査未踏地であるトルコ西部(ブルサ・エスキシェヒル・マニサ・イズミル・イチェル周辺)において調査を実施し、対象遺構の平面実測図、写真測量図、細部写真等を拡充させるとともに、これまでの検討の精度を向上させる。併せて、大学図書館等で文献史資料の収集を行う。調査回数・期間は、調査日程の調整・昨年度での研究の進捗状況を勘案し、申請者単独による短期間の調査2回、あるいは補助員を同行させた長期間の1回とし、合計4週間程度とする。 ●内部構成の検討の総括:ドーム直下の架構形式やクリプト内部の建築構成に着目した前年度までの検討を踏まえ、主階部と基壇部の複合手法、主階部下部からドームに至る架構形式について、単一遺構における複数の架構手法の使用法や組織化、その際に生じる同一手法間での差異をについて検討する。さらに、多様な内部構成を墓廟の創建時期・地域に準拠して系統化することで、その実態や遺構間で異なった架構形式の採用された要因を明らかにする。 ●外部構成の検討の総括:前年度の検討結果を踏まえ、屋根部・主階部・基壇部各部位の組み合わせ方や部位間の取り合いの処理方法という技術的側面から、建築外部全体の構築法について検討する。さらに、多様な外部構成を墓廟の創建時期・地域に準拠して系統化することで、その実態や外部形状を構築する建築技術の伝播過程を明らかにする。 ●調査および分析の結果を、各種学会の研究報告会・論文等で随時報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記したように、本年度の調査は日程の都合上予定を一部変更し、トルコ共和国中央部で実施した。一方、本来の調査予定地であったトルコ西部(次年度調査予定)では、対象遺構の多くが都市郊外に残存しており、これまで以上に車両借上(タクシー・レンタカー)の日数・回数が必要となる。すなわち、調査地変更による車両借上費・燃料費の差額が次年度使用額として生じた、主たる要因である。また、現在の円安が進む状況においては、来年度予定されている現地調査における車両借上費・燃料費・書籍購入費の更なる増加も予測される。さらに、一部の調査機器の動作に不安があり、それらの修理あるいは新規購入が生じる恐れもある。以上から、若干ながら可能な限り予算を次年度のために残した。 従って、次年度使用額を含めた次年度の研究費の大部分は、今年度の調査実績を考慮しても、現地調査の旅費・車両借上費・燃料費・書籍購入費に充てることを予定している。また、必要に応じて、カメラレンズ・ノートパソコン等の調査機器の更新のための費用に充てることを予定している。
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