研究課題/領域番号 |
24760516
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
守田 正志 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 東工大特別研究員 (90532820)
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キーワード | イスラーム / トルコ / 墓廟建築 / アナトリア / 建築技術 / 外部構成 / 内部構成 / クリプト |
研究概要 |
平成25年度は、昨年度の調査結果を踏まえ、研究対象地域であるトルコ共和国の西部において、現存する墓廟建築の悉皆調査を2回実施し、現地研究協力者との研究・調査打ち合わせ及び調査許可関係の調整を実施した。各回の調査内容は、以下の通りである。 ●第1回目の調査として、トルコ南西部諸都市(マニサ、ティレ、エイルディル、アンタルヤ)およびその近郊において、約30棟の墓廟の調査を2013年8月(約2週間)に、第2回目の調査として、トルコ北西部諸都市(イズニック、ブルサ、アマスヤ、カスタモヌ)およびその近郊において、約20棟の墓廟の調査を2014年3月(約3週間)に実施した。写真撮影・平面実測を中心に、当該地域における遺構の状況を把握するとともに、いくつかの遺構では文献において不明であったクリプトの有無や内部架構の詳細を確認した。また、調査から得られた写真データおよび実測データに基づく平面図から、遺構ごとに、建築外部構成・内部構成の整理を進めた。 ●調査から得られた写真データおよび実測データに基づく平面図から、遺構ごとに、建築外部構成・内部構成の整理を進めた。本調査において、トルコ共和国西部に現存する墓廟を概ね調査し終えた。調査データを基に、これまでのデータベースを更新し、クリプト構成の検討を終えるとともに、外部構成・内部架構構成の検討を推進した。 上記の調査ならびに研究成果の一部を、2013年度日本建築学大会、2013年度日本建築学会関東支部研究報告会等において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現地調査に関して、本年度は2回調査を研究計画に従ってトルコ西部で実施した。本年度の調査では、本来の予定していた約30棟を大幅に上回る約50棟の遺構について調査を実施し、トルコに現存する検討対象の墓廟の調査をほぼ完了できたことから、データの拡充においては当初の計画以上に進展しているといえる。 調査で得られたデータを基に、クリプト構成の分析を終え、査読論文の執筆を進めている。さらに、外部構成の検討、内部架構構成のデータ整理ならびに分析を着実に進めている。また、研究最終年度である来年度に向け、墓廟の多様な建築構成を創建時期・地域に準拠して系統化するための試論として、トルコ東部のエルズルムならびにワン湖、トルコ中央部のカイセリと地域を限定し、当該地域に残る墓廟の系統化を行い、墓廟建築の歴史的展開の一端を明らかにした。 以上から、現在までの達成度としては「当初の計画以上に進展している」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
●平成26年度は調査を纏める年度ということから、これまでの成果から顕著となった建築形式を有す地域で重点的に調査を行う。また、研究の進捗状況に応じて、既に調査した地域・遺構での補足調査、比較対象となるキリスト教建築・オスマン建築遺構の調査を実施する。対象遺構の平面実測図、写真測量図、細部写真等を拡充させるとともに、これまでの検討の精度を向上させる。併せて、大学図書館等で文献史資料の収集を行う。調査回数・期間は、調査日程の調整・昨年度での研究の進捗状況を勘案し、申請者単独による調査1回とし、3週間程度とする。 ●彫刻装飾のモチーフを幾何学紋様と具象彫刻に大別して整理・検討し、それぞれの特徴や構法を明らかにすることで、近隣のイスラーム建築やキリスト教建築との比較基準を作成する。更に、彫刻のモチーフと使用位置との対応関係を検討し、地域・創建時期による優勢的な装飾プログラム有無を明確化する。 ●これまで個別に検討してきた、工法、内部構成、外部構成、装飾形式を統合し、使用材料と架構形式との関係、架構形式の使用位置による外部構成への影響、主階部および屋根部内外の形状の対応関係、彫刻装飾のモチーフと使用位置との関係などの考察から、墓廟建築の類型化とその建築的特徴を明らかにする。次に、時代・地域的傾向を考慮して、導出した各類型の特徴から、墓廟の建築形式とその基盤となる建築技術の系譜を明らかにする。 ●調査および分析の結果を、各種学会の研究報告会・論文等で随時報告する。
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