平成26年度は最終年度にあたることから、これまでの成果の補足調査として、イタリアのローマにおいてイスラーム墓廟建築の祖形と目される集中式洗礼堂の調査、トルコ共和国南東部において墓廟建築の調査を行った。併せて、現地研究協力者との研究・調査打ち合わせ及び調査許可関係の調整を実施した。各回の調査内容は、以下の通りである。 ●2014年8月から9月にかけての約2週間で、ローマ市内の集中式洗礼堂およびトルコ共和国南東部のマルディン、ディヤルバクル、エラズー、マラティヤ市内ならびに周辺都市に残る墓廟15棟について、写真撮影・平面実測を中心に、当該地域における遺構の状況を把握するとともに、いくつかの遺構では文献において不明であったクリプトの有無や内部架構の詳細を確認した。 ●調査から得られた写真データおよび実測データに基づく平面図から、遺構ごとに、建築外部構成・内部構成の整理を進めた。本調査において、トルコ共和国西部に現存する墓廟を概ね調査し終えた。調査データを基に、これまでのデータベースを更新し、墓廟建築の工法、内部構成、外部構成、装飾形式を統合し、使用材料と架構形式との関係、架構形式の使用位置による外部構成への影響、彫刻装飾のモチーフと使用位置との関係などの考察から、墓廟建築の類型化とその建築的特徴について検討した。さらに、トルコ東部・中央部地域の墓廟建築を対象に、時代・地域的傾向を考慮して、導出した各類型の特徴から、墓廟の建築形式とその基盤となる建築技術の系譜を明らかにした。 上記の調査ならびに研究成果の一部を、2014年度日本建築学大会、2014年度日本建築学会関東支部研究報告会等において報告した。
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