研究課題/領域番号 |
24760518
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
是澤 紀子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40431978)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神社 / 建築 / 装飾 / 環境 / 景観 |
研究概要 |
本研究の目的は、中世後期から近世にかけて装飾が発展してゆく神社本殿とその景観を対象として、建築形態や細部装飾のみならず、神社本殿が位置する境内、そして周辺環境とが一体となって形成してきた歴史的環境をとらえ、信仰とともに人々が神社に求めた景観と、そこでの意匠的特質を解明することである。 本年度は、国宝および重要文化財建造物として指定されている建造物を中心に、中世後期から近世にかけての神社本殿を有する神社を抽出し、それらの史資料を収集し整理することによって、建築形態および細部装飾、建築年代、祭神等にかんするデータベース化を行った。とくに室町後期までの遺構数を時代別および地域別にみると、大多数が畿内に現存していることが知れる。その建築形態の多くは、吉備津神社や日吉大社のように特殊な形態ではなく、流造・春日造・入母屋造といった一般的な建築形態をとる在地の神社である。このうち、室町中期以後では、畿内に遺構が多く現存しているが、これらの細部装飾が取り付く部位については、地域により特徴が見出された。そこでは、たとえば神社本殿の身舎における正面の装飾のみならず側面にまで装飾をみせる事例のように、神社本殿に装飾が取り付く部位は、神社本殿の側面や背後をとりまく緑地や瑞垣等の周辺環境がもたらす領域形成とも関連していることがうかがえる。なお、細部装飾の種類については、次年度に引き続き史資料を収集し、データベース化を行い分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、国宝および重要文化財建造物として指定されている建造物について、遺構が多く現存している畿内を中心として、史資料の収集および整理を行った。これに対して、畿内以外の各地の神社について、また近世初期の神社建築については、引き続き次年度に、資料の収集および整理を行う予定である。 なお、細部装飾の部位についてはデータを作成することができたが、その種類については、各々の修理工事報告書を分析するとともに、現地調査を行う必要があるため、次年度に引き続き史資料を収集し、データベース化を行い分析する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、国宝および重要文化財建造物として指定されている建造物について、引き続き、神社建築のデータベース化を進める。そのうえで、修理工事報告書を中心として細部装飾の取り付く部位と種類についての分析を行う。さらに、これらの神社建築に対する絵図史料の収集を行い、周辺環境がもたらす領域形成や、そこに描かれた植生を分析する。そのさい、中世後期から近世にかけての神社本殿が現存しない神社であっても、中世以前より存在する神社の景観については、緑地の形成などその周辺環境を含めて分析の対象とする。人々が神社に求めた景観として、建築形態や細部装飾のみならず、境内の配置構成、周辺の緑地景観や地理的条件等を含めた周辺環境全体の視点から、それらの相互関係とともに一体的に検討を行ってゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)資料収集と現地調査対象の比較分析 国宝および重要文化財建造物として指定されている建造物について、24年度に引き続き、史資料の収集および整理を行い、建築形態や細部装飾に関するデータベースを作成する。 2)古絵図に描かれた神社景観の植生と領域構成 植生については、主として針葉樹・広葉樹の区別に着目し、かつ参道や境内、神社本殿周囲、その背後、後背林といった領域別の構成について明らかにする。その上で、植生の構成を分析する。その際、領域の変遷について検討をくわえる。また、絵図に描かれた範囲の特定を行い、神社に求められた環境としての領域を把握し、祭礼に継承されている信仰の環境との相関を考察する。 3)現地調査を伴う資料の収集と分析 細部装飾の発達した建造物を中心として、現存する建造物の調査を実施する。また、2)による絵図の植生分析において典型的な歴史的環境を形成している事例については現地調査を実施する。 以上にくわえ、収集資料の整理(研究補助者によるデータ整理、資料入力)、古絵図及び古文書にもとづく分析を行う。
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