研究課題/領域番号 |
24760519
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朽木 順綱 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50422994)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ディミトリス・ピキオニス / ギリシア / カウンター・モダニズム / 建築論 / 場所論 |
研究概要 |
本研究は,近代建築史研究における新たな知見の獲得をめざして,これまで十全に明らかにされることのなかった西欧周辺国(ギリシア,トルコなど)における近代主義の批判的受容や伝統的様式の独自の展開のありようを〈カウンター・モダニズム〉と位置づけ,これを建築家による具体的な言説・作品研究を通して解明することを目的とする。 交付申請書に記載の通り,研究遂行にあたっては,近代建築に関わる基礎的資料の収集,分析により,モダニズム主要国における建築思潮と周辺国における〈カウンター・モダニズム〉の萌芽的事象を対照させつつ,その歴史的,思想的解釈を行う〈方法A〉と,研究における定点獲得をめざし,モダニズムの草創期から展開期にかけて独自の活動をおこなったギリシアの建築家ディミトリス・ピキオニスの思想と作品について論及する〈方法B〉とにより,重層的探求を試みる計画であるが,本年度においては,とりわけ〈方法B〉すなわちピキオニスの思想,作品研究を重点課題として着手した。 ピキオニスの資料は数点の書籍を除き,ギリシア国内に限られた出版物である。またその発行部数も限られており,国外での入手は困難であることが多い。このため,研究に着手するにあたり,これらの資料を国内外にわたって渉猟することが肝要であるため,本年度においてはピキオニスが教職を得た国立アテネ工科大学や,ピキオニスのドローイング等を数多く収集するベナキ美術館など,各アーカイブへの現地訪問により,資料群の全容解明を行う予定であったが,昨今のギリシアの政情不安により,おもな渡航先であるアテネ,テッサロニキにおいて危険情報が発表されるなど,現地への渡航を断念せざるを得なかった。このため,本計画に先行して収集済みであった著作集や作品集の解読による文献研究を実施することとし,その成果の一部を日本建築学会大会における学術講演などにおいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の研究計画の概要のとおり,政情不安による現地調査の未着手により,じゅうぶんな資料の収集に到ることができなかった。すでに入手済みである基本的資料の解読は着実に進行中であるものの,これを補うための現地資料や建築作品の調査等が急務である。 調査のための基本的な機器類,渡航計画等はすでに整っているため,その実施を次年度における最優先課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載の通り,本研究が試みる〈方法A〉としての基礎的知見の整備と,〈方法B〉としての個別的事例の考察による重層的探求の遂行にあたり,今後は本年度の重点課題であった〈方法B〉における未着手作業を補完するとともに,〈方法A〉についての作業を開始する予定である。 とりわけ,本研究者がこれまで取り組んできたフランス,ドイツ,オランダ等の西欧主要国における建築思想の主題を再読しつつ,その顕在的な様式の成立に対して相反的かつ応答的に引き起こされる潜在的な衰退の歴史過程として,歴史的,地理的に隔たった周縁国における建築思想についての対照的考察を試みたい。すなわち,いわば展開力,新規性を命題とするモダニズムに応答するもうひとつの近代運動としての,受容力や穏健さに基づく〈カウンター・モダニズム〉のありようについて,その一端を明らかにすることをめざす。 このような〈方法A〉および〈方法B〉による複眼的な視座から獲得される成果を包括することで,いわゆる巨匠たちの「勝者の歴史」に彩られた近代建築史に並行する,もうひとつのモダニズムとしての〈カウンター・モダニズム〉の可能性を正しく評価するとともに,「現実批判の精神」としての新しい歴史観の確立をめざし,これまでの近代建築研究における成立史としての〈見えるモダニズム〉に相補的に随伴する,受容史としての〈見えざるモダニズム〉から逆説的な歴史の再解釈を企てたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,本年度の未着手課題であった,〈方法B〉の基軸としての現地での調査,資料収集に着手し,その成果についての分析,考察を行う。また,これと同時に〈方法A〉についての文献調査,解読をとおして,最終年度における包括的考察に向けての基礎的知見の整備を進める。
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