研究課題/領域番号 |
24760519
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
朽木 順綱 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (50422994)
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キーワード | ディミトリウス・ピキオニス / ギリシア / カウンター・モダニズム / 建築論 / 場所論 / アルド・ファン・アイク / 開け |
研究概要 |
本研究は,近代建築史研究における新たな知見の獲得をめざして,これまで十全に明らかにされることのなかった西欧周辺国(ギリシア,トルコなど)における近代主義の批判的受容や伝統的様式の独自の展開のありようを〈カウンター・モダニズム〉と位置づけ,これを建築家による具体的な言説・作品研究を通して解明することを目的とする。 平成25年度における研究遂行にあたっては,交付申請書に記載のとおり,近代建築に関わる基礎的資料の収集,分析により,モダニズム主要国における建築思潮と周辺国における〈カウンター・モダニズム〉の萌芽的事象を対照させつつ,その歴史的,思想的解釈を行う〈方法A〉を通した研究を重点的課題とし,そのための基礎的資料の収集,分析を行った。これに並行し,前年度においてなされた〈方法B〉,すなわち,モダニズムの草創期から展開期にかけて独自の活動を行ったギリシアの建築家ディミトリス・ピキオニスの思想と作品に関する考察を補足的に推し進め,一連の研究における定点獲得の試みを継続している。 とりわけ,デ・スティルなどに代表されるような,黎明期より近代建築の主要国の一つであったオランダにおいて,ピキオニスの〈カウンター・モダニズム〉としての可能性をいち早く見出した建築家アルド・ファン・アイクの思索について注目し,かれの論考を解読することによって,近代が獲得した空間経験における主体性の限界を克服しうる,外部性への「開け」や「超越性」を鍵語とした前-主体性,あるいは主体に絶対的に先行する他者性へ向けての,遡行的視座を獲得することができた。このことは,いわば西欧の近代建築主要国からみた「他者」としてのギリシアなどの周辺国との遭遇や,あるいは,近代建築を受容する各国内における近代性と,その「他者」としての独自の伝統との和合などの問題に重ねあわせて理解することができる可能性を示すものとして注目される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象のひとつであるディミトリス・ピキオニスの拠点であったギリシアへの現地調査が,昨今の同国の政情不安および研究者の本務先とのスケジュール調整の不調により,いまだ未着手であるため。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載の通り,本研究が試みる〈方法A〉としての基礎的知見の整備と,〈方法B〉としての個別的事例の考察による重層的探求の遂行にあたり,今後は本年度の重点課題であった〈方法A〉における未着手作業を補完するとともに,〈方法B〉の最重要案件であるギリシアでの現地調査について,できるだけ早期に実現し,最終年度の総括に向けた資料の収集を行う予定である。 総括にあたっては,上述のような〈方法A〉および〈方法B〉による複眼的な視座から獲得される成果を包括的に反省することで,いわゆる巨匠たちの「勝者の歴史」に彩られた近代建築史の裏面に伏流する,もうひとつのモダニズムとしての〈カウンター・モダニズム〉の可能性を正当に評価するとともに,「現実批判の精神」としての新しい歴史観の確立をめざし,これまでの近代建築史研究の主流であった成立史としての〈見えるモダニズム〉に相補的に随伴する,受容史としての〈見えざるモダニズム〉という観点から,近代建築史における逆説的な再解釈を企てたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究対象のひとつであるディミトリス・ピキオニスの拠点であったギリシアへの現地調査が,昨今の同国の政情不安および研究者の本務先とのスケジュール調整の不調により,いまだ未着手であるため。 次年度のできるだけ早い時期に,ギリシア・トルコ方面における現地調査や現地研究者との意見交換を行い,研究遂行に必要な資料および情報の収集を行う予定である。また,これにより得られた諸情報の整理,分析等の処理を行うための人件費,機器類の整備費や,最終的な成果を論文として発表するための論文登載料なども使用計画に含まれる。
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