本研究の目的は,西欧主要国を基軸とした既成の近代建築解釈に新たな視点からの再読を試みるものとして,周辺国における近代主義の批判的受容のありようを解明することであり,いわば発展性や新規性を命題とする正統モダニズムとは対照的に,受容力や穏健さに基づく〈カウンター・モダニズム〉のありようを明らかにすることである。本助成による研究期間においては,ギリシアの建築家ディミトリス・ピキオニスの思想と作品に関する分析,考察を進める計画であったが,文献や作品集の資料収集は概ね完了したものの,近年の欧州における経済,治安情勢の悪化などのため,現地調査を十分に実施できず,研究としては課題を残す結果となった。
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