研究課題/領域番号 |
24760521
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
中野 茂夫 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00396607)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 都市計画史 / 工業開発 / 新興工業都市計画 / 近代都市史 |
研究概要 |
本研究は、工業立国日本の礎を築いた都市計画について、その原点ともいえる戦時下の新興工業都市計画に関する包括的な研究である。新興工業都市計画に指定された全23地区を対象とし、その具体的な計画内容・事業内容について都市計画技術・関連制度・予算措置・設計標準などの面から全体像を明らかにするとともに、戦後の都市計画に及ぼした影響について検証する。また新興工業都市計画の計画策定、事業の実施プロセスにおいて、工業の担い手がどのような役割を果たしたのかについて分析を行うことで、制度や技術にとどまらない実態としての都市計画について明らかにすることを目的としている。 本年度は、国立公文書館所蔵「公文雑纂」をもとに新興工業都市に関する都市計画関係史料を収集し、計画決定ならびに事業決定の具体的内容について明らかにした。新興工業都市建設では、大規模な区画整理によって都市基盤が整備されていた実態が明らかとなったが、具体的な内容は多様だったことも明らかとなった。一方で、戦前の雑誌「都市公論」「都市問題」「区画整理」を閲覧し、新興工業都市建設に関する史料の収集に努めた。その結果、部分的にではあるが、計画者の意図が明らかとなった。また戦後への展開に関しては、雑誌「新都市」の資料収集を行った。都市計画地方委員会に関する史料調査については、各県の公文書館において、八戸、挙母、豊川、勝川、広畑、福浜等で行った。また新興工業都市に準じて戦時下に工業開発が行われた勝田、水島に関しても、資料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、戦前の新興工業都市計画に関する基礎的な資料集を行った。まず国立公文書館所蔵「公文雑纂」所収の都市計画関係史料を精査した。また補完史料として「都市公論」「都市問題」「区画整理」といった雑誌をもとに資料収集を行った。戦後への展開については、雑誌「新都市」を中心に資料収集を行った。以上の結果、新興工業都市計画に関する基礎的な史料の収集については一通り収集することが出来たという点では、大きな成果を上げることができた。 一方で、実際に現場レベルで計画策定にあたった都市計画地方委員会に関する調査も併行して行ったが、一部の公文書館において史料が散逸していたこと、東日本大震災の影響で当初予定していた宮城県立公文書館が閉鎖していたことなどから、一部予定通り進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで収集してきた新興工業都市計画に関する基礎的な史料をもとに、計画内容の整理、計画図の図化によって詳細な分析を行う。具体的には、まず都市計画決定、事業決定の理由書の比較検討を行う。その上で、都市計画の具体的内容について、計画規模、道路整備の状況などから詳細な分析を行う。なお、基礎資料の整理ならびに図化にあたっては、大学院生の助力を得る予定である。 一方で、各県が所蔵している都市計画地方委員会の資料収集をひきつづき行う。工業開発に関わった企業や軍関係の資料収集を行い、企業の目論見と行政の都市計画との関係性について検討する。また戦後の展開については、雑誌「新都市」の資料整理ならびに新聞等の補足資料から明らかにするとともに、都市計画的意義について検証する。 以上の研究成果をもとに論文を作成し、研究発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、国立公文書館所蔵の都市計画関係資料の整理、図化を行う。この作業は大学院生の助力を得て実施する予定であり、謝金を支出する予定である。またその過程で必要となった補足調査も併行して実施する。また各府県ないし地方都市が所蔵している関係資料について、ひきつづき現地調査を実施する。次年度は、九州ならびに関東の新興工業都市を重点的に調査する予定である。また東日本大震災の影響で宮城県公文書館が閉鎖されていたことにより、調査が実施できず未使用額が生じた。したがって同館が所蔵する旧多賀城市の都市計画関係史料もあわせて閲覧する予定である。 一方、広畑、多賀など、新興工業都市計画のなかでも先進的な計画を行っていた都市に関して、重点的な調査を実施するとともに、研究成果を学術論文として公表する予定である。また新興工業都市に指定されてはいないが、同様の工業開発を実施していた水島を事例として比較研究のための調査を実施する。
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