最終年度には、昨年度に収集した国立公文書館所蔵の新興工業都市に関する都市計画関係史料の情報整理、またデジタル化した都市計画図をもとに分析を行った。また補足調査として、新興工業都市に関する都市計画関係の資料を再確認した。その結果、新興工業都市に関する法定都市計画の関係資料を網羅的に収集、分析することによって通常の土地区画整理設計標準よりも高い水準で計画設計された新興工業都市の特徴を理解することができた。 一方で、とりわけ特徴的な計画が作成されていた日立市については詳細な分析を行った。日立市では新興工業都市計画が実施された多賀町だけでなく、旧日立市から勝田市にいたるまで、内田祥三に住宅設計を依頼して日立製作所の住宅地計画が先進的に実施されていることが明らかになった。そこでは近隣住区論を先進的に取り入れており、多賀の後に計画された(国庫補助を受けていないため指定は受けていないが)新興の工業都市に該当する勝田でも、最終的には近隣住区を導入した都市計画図が作成されていたことを明らかにした。以上の研究成果について二編の論文が公刊済みである。 また新興工業都市計画の最初の事例である広畑について詳細な調査を実施した。広畑の新興工業都市についてはすでに行政がまとめた資料があるが、新興工業都市の都市計画区域だけでなく、その周辺を含めて一体的に計画が作成されていた事実をつきとめた。新興工業都市は法定都市計画として兵庫県が施行した土地区画整理事業だったが、その周辺では民間施行の土地区画整理時が実施されており、官民一体となって放射環状の都市計画図を作成していた事実をあきらかにした。一方、広畑では防空都市としても最先端の計画であり、防火ブロックを取り入れた最初期の事例であることも明らかとなった。以上の研究成果の一部については、1編が公刊済みであり、3編の論文を現在投稿中である。
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