研究課題/領域番号 |
24760524
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
亀井 靖子 日本大学, 生産工学部, 准教授 (50386083)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 住宅ストック / 建売住宅 / DOCOMOMO / 住宅評価 / 浜口ミホ / 持続可能 / 維持保存 |
研究実績の概要 |
1)郊外戸建建売住宅団地「新百合ケ丘住宅地」の1975年~1978年に分譲された住宅408戸を対象に目視による現状調査を行った。原形47%(192戸)、増改築11%(44戸)、建替42%(172戸)で、以前調査した分譲30年後の郊外戸建建売住宅地と比べると、年数が経っている分建替が進んでいた。建替後の2世帯・3世帯住宅は、植栽の量・種類が少なく、敷地いっぱいに建物と駐車場を確保する傾向がある。一方で、外構の手入れは整っていた。 2)浜口ミホの建売住宅設計についての資料収集・整理を行った。特に1階平面について分析を行い、和室の配置を、①玄関近くに設計することで応接間もしくはリビングと一体に利用できるプランと、②玄関から一番遠い位置に設計することでリビングの延長もしくは個室として利用できるプランがあることが分かった。どちらも生活の変化に対応しやすいフレキシブルな平面となっており、他の建売住宅より寿命が長いのではないかと予想され、持続可能な住宅ストックのヒントになると考える。 3)ドコモモジャパン選定住宅28件を対象に、それらの建物が一般大衆誌では「旅」「家族」というテーマで取り上げられる傾向があることを明らかにした。モダン・ムーブメント建築の価値は一般大衆に分かりづらいことから、建物評価に対する専門家との齟齬を埋める必要がある。本研究は今後のモダン・ムーブメント建築の維持保存を促進するための補助資料になると考えており、今後も継続したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
郊外戸建住宅団地の住民を対象としたアンケート調査で、一部の住民の同意を得ることができず、実施していた調査を中止することとなった。外構の観察調査等も行ったが、十分な結果を得ることができなかった。 また、昨年度立てた「今後の研究の推進法施策」についてはある程度達成できたが、危惧していた通り、学務等に追われ十分に研究の時間を割くことができなかった。 しかしながら、ドコモモ国際会議(ソウル)とセミナー(ポルトガル)では、出席した研究者との意見交換ができ、今後の研究につながる資料が得られた。特に、ソウルの会議ではドコモモの新たな試みについて直にディスカッションに参加でき、ポルトガルで開催されたセミナーではドコモモの今までの経緯と今後の展開について主要メンバーの講演を聞けたことで、モダン・ムーブメント建築の維持保存・活用・継承についての各国の取り組みや世界的な方向性について十分な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)基本的には、平成24年度から昨年度までに行った、郊外戸建建売住宅団地調査、一般大衆誌における住宅建築評価研究、ドコモモ国際会議等の資料整理とまとめをメインとし、情報・資料不足の部分については追加調査を行う。 2)昨年度の反省から、個人対象のアンケート調査は倫理的に難しい部分も多いので、アンケート・ヒアリング調査を行う場合は、行政・自治体・任意団体等を対象に行う方向で考えている。また、個人へのアンケート・ヒアリング調査をする場合は慎重に実施する方向としたい。 3)本研究に関連した新たな住宅地調査や見学会・シンポジウムへの参加は積極的に行い、研究をまとめる際の補助資料や裏付け資料などとして活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一番大きな理由はアンケート調査が実施できなかったことにある。 学務多忙による実質的な研究時間の大幅減少も理由の一つと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
調査結果のまとめに際し、不足している資料収集・追加調査を実施する。また、建築家が携わった戸建建売住宅団地の資料収集、ドコモモジャパン選定住宅の文献調査や現地調査などの継続調査も行う。補助が必要な場合は学生アルバイトと雇用契約を結ぶ予定である。
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