研究課題/領域番号 |
24760531
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
黒坂 貴裕 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70419901)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 技術史 / 建築構法 / 建築史 |
研究概要 |
本研究の目的として、1:茅葺道具の変遷とその地域性、2:史料と道具から見た中世以前の茅葺方法、3:逆葺き構法の分布と変遷、以上の3点を設定している。今年度は、道具の変遷と地域性について既往研究を整理し、茅葺職人への聞き取り調査と所有する道具の調査をおこなった。その結果、茅葺道具の変遷として、専用道具の発展とその恒久化という、基本的な方向性を確認した。また、根津美術館所蔵の中世繪巻物である「地蔵菩薩霊験記絵」に描かれる茅葺作業の様子について分析をおこない、専用道具が登場する以前の農作業との兼用道具を確認した。これらにより、中世から近年までの茅葺道具の基本的な流れを明らかにすることが出来た。以上の成果については、「中世の茅葺きについてー「地蔵菩薩霊験記絵」(根津美術館蔵)からー」『文化財論叢IV』(奈良文化財研究所、2012)として発表した。また、研究を進める中で、道具に対応する葺き材の種類と葺き方についての手掛かりが得られ、今後の研究推進の方向性も具体的になっている。 今年度の研究でおこなった茅葺職人への聞き取りは、国選定技術保持者(茅葺き)におこなった。現在ではほとんど行われていない近畿地方の古い道具や方法に焦点をあてたもので、その成果は貴重な記録でもある。また、「地蔵菩薩霊験記絵」については、中世繪巻物に描かれる茅葺作業について現在のところ唯一のものと考えられるが、これまで茅葺きについて焦点をあてて論じたものはなく、繪巻物自体に新たな評価をあたえることができたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までにおこなった研究によって、研究の3つの目的のうち、「道具の変遷と地域性」については80%、「中世以前の茅葺方法」については50%を達成したと評価している。特に、3年目以降に論文を発表するとしていたが、まとまりの良い研究成果が得られたことで、初年度に論文を発表することができたことは計画の大きな進展である。4年の研究期間の初年度の成果としては計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は初年度の調査研究の中で得られた、道具に対応する葺き材の種類と葺き方についての手掛かりをもとに、研究目的の一つである「逆葺き構法の分布と変遷」について重点的に調査をおこなう。当面はフィールドワークをおこない、茅葺民家・道具の調査、職人への聞き取り調査、資料収集に努める。3年目以降には調査成果をもとに論文を投稿する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度は計画以上の成果が得られ、論文投稿料を使用することなく成果発表することもできたため、研究費を次年度以降に使用することとした。申請額の減額分を補填し、研究計画の変更を避けることにした。研究費の使用は申請通り、フィールドワークなどの旅費を主とする。
|