研究概要 |
鉄系超伝導体および酸化コバルト超伝導体の周辺における新規機能性物質の探索を目指して研究を行った。今年度の研究予定では両方の超伝導体の周辺物質を探索する予定であったが、鉄系超伝導体の周辺物質であるコバルト・ヒ素系物質において研究が進展したので、こちらの研究に注力した。その結果、以下の結果が得られた。 ①Ae2MO3CoAs (Ae:アルカリ土類金属, M:軽い遷移金属)と書かれる物質群の探索の結果、Sr2ScO3CoAs, SrVO3CoAs, Ba2ScO3CoAsの合成に成功し、Sc化合物がコバルトの磁気モーメントが強磁性秩序を示す一方でV化合物は強磁性秩序を示さないことが分かった。ただしV化合物ではVの磁気モーメントが反強磁性秩序を示した。これら三つの物質の間で固溶系を合成した結果、特にSr2(Sc,V)O3CoAsにおいてコバルトの磁気モーメントが温度の低下とともに強磁性秩序から反強磁性秩序へ相転移することが分かった。この現象は以前注目していたSmCoAsOやNdCoAsOと共通の現象であり、巨大磁気抵抗が期待される。 ②AeCo2As2 (Ae:アルカリ土類金属)と書かれる物質群の探索の結果、これまで磁気秩序を示さないと考えられていたSrCo2As2においてCoを部分的にNiに置き換えることで他のCoAs層状化合物と同程度の磁気秩序が誘起されることを明らかにした。これはNiに部分置換することによりエネルギーバンドに電子が添加され、フェルミエネルギーの位置が磁気秩序に有利な状況に”チューンナップ”されるためと考えられる。この結果は①で挙げたSrVO3CoAs中のコバルトの磁気モーメントを秩序化する際のヒントになる。Vの3d電子が一部Coに移動する”セルフドーピング”が考えられ、逆にCoをFeで部分置換することにより磁気秩序を誘起できる可能性が考えられる。
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