研究課題/領域番号 |
24760536
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
宮崎 秀俊 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10548960)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 熱電変換材料 / ホイスラー化合物 / Fe2VAl / 薄膜 |
研究概要 |
省エネルギー化を進めるために今まで無駄にしていた工場や車から排出される熱を利用することが可能な“.熱電効果”を利用した熱電発電に関する研究が活発に行われている。ホイスラー型Fe2VAl化合物は、金属元素のみから構成されているにも関わらず半導体的な電気伝導の挙動を示し、フェルミ準位近傍に鋭い状態密度の落ち込みを持つ擬ギャップを有する擬ギャップ系金属間化合物である。このような擬ギャップ系金属間化合物は、電子やホールをドープしフェルミ準位における擬ギャップの位置をコントロールすることにより、大きな熱電能を持ったn型およびp型熱電材料の創成を行うことが期待できる。そこで、母材料であるFe2VAlの擬ギャップを有効に利用したFe2VAl単結晶試料、特に高性能熱電素子として要求されるフレキシブル性を備えたFe2VAl単結晶薄膜を作製し、高性能熱電素子を実現することを目的として研究を行った。 本年度に得られた成果は、以下の2つである。 (1) ホイスラー化合物薄膜作製装置の開発 フレキシブル性を有し、応用の範囲を広げる熱電デバイスの開発には、熱電材料の薄膜化は非常に有用である。しかしながら、金属間化合物薄膜の作製は、作製条件の最適化、基板の選択など、精密に決定すべき条件が多数ある。そのため、熱電材料用の薄膜作製装置の設計を行い、装置の開発に成功した。 (2) Fe2VAlバルクおよび薄膜単結晶の作製および物性評価 詳細な熱電特性を評価するためには、単結晶試料の作成は必要不可欠である。そこで、チョコラルスキー法を用いて、Fe2VAl単結晶試料の作成を行った。その結果、純良な単結晶試料の作成に成功し、詳細な熱電特性の解明に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究の目標は、(1)ホイスラー化合物薄膜作製装置の開発および(2)Fe2VAlバルクおよび薄膜単結晶の作製および物性評価、であったが、研究は概ね順調に進んでいる。しかしながら、薄膜作成装置の完成が年度末となったため、薄膜試料の作成にはまだ至っていない。現在のところ、装置の立ち上げは完了したので、平成25年度で十分、研究の遅れは取り戻せると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に計画していた、Fe2VAl単結晶薄膜の作製と熱電特性評価を行うことが最も重要であるため、まずはその研究を優先的に行う。その後、更に熱電性能を向上させるためにドープFe2VAl単結晶薄膜の作製とFe2VAl単結晶薄膜の電子状態の解明、機能性向上を試みる。 具体的には(ドープ系Fe2VAl単結晶薄膜の作製) さらなる高性能熱電素子を創成するために、Fe2VAlに電子やホールをドープしたドープ系Fe2VAlの作製に移行する。この段階でも、まずドープ系Fe2VAlバルク単結晶を作製し物性評価を行う。これにより最適なドープ原子、組成を決定した後に、ドープ系Fe2VAl単結晶薄膜の作製・物性評価を行う。これにより、Fe2VAlをベースとした、高性能熱電素子の創成を試みる。 (Fe2VAl単結晶薄膜の電子状態の解明) 熱電特性のメカニズムを解明するためには、その起源となる電子状態の知見は必要不可欠である。そこで、電子状態を高精度で決定可能な角度分解光電子分光(3D-ARPES)測定や構成元素の価数や化学状態を決定可能なX線吸収分光(XAS)測定を行うとともに、その電子状態の理解のために第一原理電子状態計算を行う。これらの測定は、愛知県岡崎市の分子科学研究所放射光施設UVSOR-IIのBL4B(軟X線吸収分光測定ビームライン)、BL5U(表面敏感高分解能3D-ARPES測定ビームライン)、BL7U(バルク敏感超高分解能3D-ARPES測定ビームライン)などの放射光施設で行う。また、実験によって得られたFe2VAl単結晶薄膜の電子状態の理解のためにWien2kを用いた第一原理電子状態計算を行う。この手法では電子状態やゼーベック係数の理論計算を行うことが可能である。これらの手法を組み合わせることにより、Fe2VAlの特異な電子状態と顕著な熱電特性との関係性を明確にする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、薄膜作成条件の精密化に必要不可欠な、薄膜作成装置の残留ガスを分析するための四重極質量分析器の購入を行う。また、装置の真空の維持に必要不可欠な超高真空部品を消耗品として計上している。 次年度が研究最終年度となるため、得られた研究成果を社会に還元するために、学会発表を行。そのための旅費を計上した。
|