(1) 高性能熱電材料Fe2VAl合金の探索 従来のFe2VAl合金は熱電性能のピーク温度がおよそ300 K~ 400 Kであり、熱電デバイスを作製するためには、そのピーク温度を500 K~600 Kに向上させることが必要であった。そこで、従来のホイスラー合金の開発方針であるキャリアードープにより電子構造を剛体バンドモデル的に制御することによる熱電特性の向上だけではなく、積極的に電子構造を変化させる非化学両論効果を取り入れることにより、更なる熱電特性の向上を試みた。そこで、Fe2V1+xAl1-x合金を作製し、熱電特性を決定するとともに、置換に伴う熱電特性の変化を議論するために局所結晶構造解析および電子状態を詳細に決定した。その結果、VとAlの置き換えのみでn型およびp型の熱電特性の大幅な向上に成功し、また、そのピーク温度を500 K~600 Kへと向上させることに成功した。 (2) 高性能熱電デバイス用Fe2VAl薄膜作製装置の開発 フレキシブル性を有し、応用の範囲を広げる熱電デバイスの開発には、熱電材料の薄膜化は非常に有用である。しかしながら、金属間化合物薄膜の作製は、作製条件の最適化、基板の選択など、精密に決定すべき条件が多数あるため、熱電材料用の薄膜作製装置の設計が必要不可欠である。そこで、本開発では、熱電薄膜の作製のために以下の点を重視し、設計を行った。・試料作製時に不純物の混入を防ぐため、超高真空下での蒸着を可能にすること。・デバイス作成を目指し、スパッタリング法の適用が可能な事。・様々な試料作製条件を試すことができるよう、効率よく試料を交換、搬送できること。ロードロック室が設置できること。・金属間化合物の純良な試料の作製にために、基板を加熱しながら蒸着できること。・将来、他の蒸着装置も設置できるよう、装置に拡張性を持たせること。以上の条件を満たすよう、蒸着装置の設計を行い、装置の開発に成功した。
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