研究課題/領域番号 |
24760538
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宗藤 伸治 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20380587)
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キーワード | 熱電材料 / クラスレート / ゼーベック係数 / 比抵抗 / 移動度 / パワーファクター |
研究概要 |
通常Ba8AlxSi46-x クラスレートでは、キャリアである電子濃度が高いため、ゼーベック係数が小さくなってしまう。そのため、キャリア濃度を低くすることにより、ゼーベック係数を大きくすることにより性能向上が試みられている。Ba8AlxSi46-x クラスレートでは、x=16 の結晶が作製できた場合、真性半導体となり、キャリア濃度が最小となる。そこで、前年度に作製するBa8Al12Si34 クラスレートの作製条件を元に、本年度は融液のAl 含有量を増やしたAl リッチな融液からの単結晶引き上げにより、Al 組成比の大きい単結晶作製を行うことにより、n 型Ba-Al-Si クラスレート結晶の高性能化を試みた。その結果、Al 含有量を増やした融液中からは、Al を多く含んだ単結晶の引き上げが可能であることが分かり、最もAlを含んでいる結晶は、Ba8Al15.5Si30.5であった。その結晶の熱電性能評価を行った結果、パワーファクターが1.1×10^-3 V^2/K^2Ωmとなり、高性能な材料の作製に成功した。 また、添加元素を変化させることにより、p型シリコンクラスレートの探索も試みた結果、添加元素にAuを用いた場合にp型のBa8Au5Si41クラスレートの作製に成功し、材料コストが高くなるという短所はあるものの、pとn型を用いたπ型熱電発電モジュールの作製可能性が見出せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
π型熱電発電モジュールには、n型とp型の材料が必要となってくるが、シリコンクラスレート結晶においてp型材料の合成の報告例が少ない。今回、Ba-Au-Su系にて、p型材料の作製に成功し、π型モジュールの作製に目処が立った。これは、計画通りである。また、各種の分析に必要な装置は、研究代表者の所属している研究部門が既に所有しており、新規購入による時間的ロス無く分析は進められた。熱電性能評価に関しても比抵抗測定、ゼーベック係数測定、熱伝導度測定が必要であるが、これらの測定装置に関しても、研究代表者の研究室既存のものが稼働しており、計画通りに研究が遂行されたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、単結晶Ba8AlxSi46-xクラスレートの作製に成功していたが、キャリアである電子濃度が高いため、ゼーベック係数が小さいものとなっていた。本年度の研究において、融液のAl含有量を増やしたAlリッチな融液からの単結晶引き上げにより、Al組成比の大きい単結晶作製を行い、高性能なn型Ba-Al-Siクラスレート結晶の作製に成功した。また、π型モジュールに必要なp型Ba-Al-Siクラスレート結晶の作製にも成功した。今後は、これらの材料を用いた高性能な熱電発電モジュールの試作を行う。
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