本年度はナノレベルで構造を制御した炭素膜を被覆したセラミックスナノ粒子を原料として用いることで、炭素がナノレベルで均質に複合化された炭素-セラミックスモノリス構造体の開発を行った。 ■ 高い導電性を持つ炭素-アルミナナノ複合体の作製 一次粒子径約10 nmのアルミナナノ粒子を800 ℃のプロピレンCVDによりグラフェン数層分の炭素被覆を施した。この炭素被覆アルミナナノ粒子を原料として放電プラズマ焼結によりモノリス体を作製した。SEM及びTEMによるモノリス体のナノ組織構造観察から、アルミナに被覆した炭素膜の厚さ(0.4~2 nm)と焼結条件により、炭素-アルミナナノ複合構造が変化することが確認された。例えば、炭素被覆量20 wt%のアルミナナノ粒子から作製したモノリス体内部では、炭素が粒界100 nm以下のアルミナの周りに均一に発達し、全体にシームレスなナノネットワーク構造を形成していることが確認された。このモノリス体の導電率は12000 S/mを超え、同質量の炭素を含むカーボンナノチューブ-アルミナ複合体の二倍以上の導電性を持つことが分かった。つまり、炭素ナノネットワークがアルミナマトリックス内で均質に存在することで、効率的な電子移動パスができたためと考えられる。
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