研究課題/領域番号 |
24760543
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
谷口 博基 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80422525)
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キーワード | 誘電体 / 構造相転移 / 酸素四面体 / セラミックス / 強誘電体 / 焦電体 / 圧電体 / 酸化物 |
研究概要 |
成25年度の実施計画に沿って、酸素四面体一次元鎖を有する化合物系における新規物質開発取り組んだ。具体的には、充填トリジマイト型酸化物であるBaAl2O4、BaCoSiO4、及びBaMGeO4(M=Zn,Co,Ni,Mn)、さらに充填ソーダライト型酸化物(Ca,Sr)8(Al12O24)(WO4)2の合成及び物性評価を行った。BaAl2O4では、外因性強誘電性相転移の制御に成功し、それに伴うナノドメイン構造の変化を透過型電子顕微鏡観察によって捉えた。BaCoSiO4では、可視光照射の下で300%にも及ぶ誘電率変化を示す光誘電率効果の創出に成功した。また、BaZnGeO4は実際に外部電場による分極反転が確認された数少ない充填トリジマイト型酸化物であるが、本研究ではこの物質におけるZnサイトの遷移金属元素置換に初めて成功し、それによる誘電特性及び相転移挙動の変化を明らかにすることで酸素四面体型強誘電体の物性制御における重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度に実施予定であった結晶構造中にBi2SiO5と同様の酸素四面体一次元鎖を有する化合物系における強誘電性の創出に関して、当初予定していた充填トリジマイト型酸化物に加えて、充填ソーダライト型酸化物に関しても新規物質開発を行った。その結果、歪みを第一秩序変数とし、歪-分極結合によって強誘電性を発現する外因性強誘電体の新規開発や、可視光照射によって誘電率が大きく変化する光誘電率効果の創出に成功した。これらの結果の全てにおいて、学術会議や論文誌、あるいは特許出願が進められており、当初の計画以上の進展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に創出した充填トリジマイト型酸化物BaCoSiO4における光誘電率効果に関して、波長可変励起光源を用いた光誘電率効果の波長依存性や物性計測システム(PPMS)による温度依存性測定によって、発現メカニズムの解明に取り組む。それと並行して、異種遷移金属置換によって光誘電率効果の増強にも取り組み、将来的な応用を見越した物質開発を進める。また、外因性強誘電性相転移を示す充填ソーダライト型酸化物Ca8(Al12O24)(WO4)2-Sr8(Al12O24)(WO4)2固溶体において、現時点においては室温以上の相図を明らかにしているが、平成26年度においては物性計測システム(PPMS)を用いた低温における誘電測定を実施し、相図を完成させる。それと並行して焦電流測定による自発分極値の計測を行い、誘電体デバイス素子としての材料特性を評価する。得られた結果は、適宜、学術会議・論文誌、及び特許等によって公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度4月に東京工業大学より名古屋大学に転任して研究環境が大きく変化したため、名古屋大学における1年間の研究を通じて本研究の効率的な推進のための予算の効果的な用途を再検討し、平成26年度に予算執行調整を実施するという計画に基づいて、次年度使用額が生じた。 本年度予算は主に高温電気炉2台及び分光光源の購入、国内外の会議出席のための旅費、論文投稿関連費用に充てる。
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