研究課題/領域番号 |
24760544
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中嶋 聖介 横浜国立大学, 工学研究院, 研究教員 (40462709)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 磁気光学効果 / 局在表面プラズモン共鳴 / フェムト秒レーザープロセス / ガラス / 結晶析出 |
研究概要 |
本年度、目的の微粒子の構成元素をドープしたガラス内部に超短パルスレーザーを照射することで、プラズモニック強磁性ナノ複合微粒子の選択的な析出の実現に取り組んだ。 様々な磁性イオン、プラズモン金属を含むガラスを作製したなかで、Fe2O3およびAlを共ドープしたシリケートガラスにおいて顕著な成果を得た。調整した粉末混合試料を白金るつぼ内で溶融し、ガラス試料を作製した。対物レンズを用いて近赤外フェムト秒レーザー光をガラス試料内部に集光照射し、水平方向のラインスキャンを繰り返して正方形状に改質を行った。照射により濃い灰色に着色した改質領域は、450℃の熱処理により薄い黄色へと変化した。着色の原因は400 nm付近の比較的鋭い吸収ピークであることがわかり、異なる照射条件および熱処理条件に対してピークシフトが起こることを確認した。このことから、金属Alナノ微粒子表面に発生した局在表面プラズモンによる共鳴吸収が起こっているものと考えられる。一方、室温における磁化測定ではレーザー照射および熱処理後の飽和磁化が著しく増大しており、フェリ磁性Fe3O4ナノ微粒子が析出し粒成長していることがわかった。さらに、ファラデー回転スペクトルにおいては、紫外-可視領域においてファラデー回転角の増大がみられ、400 nm付近に明瞭なピークを観測した。吸収スペクトルにおけるピークシフトと同様の傾向を示すことから、Alナノ微粒子の粒径依存性が現れたものと考えられる。以上より、局在表面プラズモンとファラデー効果の間に直接的なカップリングが存在していることを実証した。透過電子顕微鏡による微視的構造観察では、ナノ微粒子ナノコンポジットの析出を直接確認した。 以上の成果により磁気光学デバイスのプラズモン増強に関する新しい展開が期待され、高効率な高速光変調素子、や高密度記録媒体などへの応用の実現に向けて寄与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初実現を期待していた組成ではよい結果が得られなかったが、様々な検討の結果、ガラス内部に目的のプラズモニック強磁性ナノ複合微粒子を選択析出させることに成功した。また、これらの成果をいち早く海外論文誌において発表することができ、初年度の目的は概ね達成されたと考えている。一方、次年度取り組む予定のマイクロファラデー効果の評価測定系構築の準備も本年度開始する予定であったが、こちらはそれほど進展しておらず早急に取り組む必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
計画の通り、マイクロファラデー効果の評価測定系構築を行い、今年度得られた成果から導き出された最適組成の試料において測定を行う。これにより高効率磁気光学デバイスに向けた評価実験を進展させるだけでなく、磁気光学効果の局在表面プラズモン増強現象を解明する詳細な基礎研究にも取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、マイクロファラデー効果の評価測定系構築が予定通り進行しなかった理由として、測定条件を十分にカバーする性能を有する電磁石(磁場発生装置)の設計を詳細に詰めた際、予定の予算では実現が困難であることが判明し、諸々の調整が必要とされたことが挙げられる。このことが、研究費が大幅に次年度に繰り越される最大の理由である。次年度は早急に装置の設計を終え、目的の性能を有する装置を購入し、評価実験系をいち早く立ち上げる予定である。
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