研究課題
平成25年度は、トポロジカル絶縁体と予測されているハーフホイスラー合金LaPtBi薄膜の結晶構造と電子状態の関連について研究を行った。La、Pt、Biの各元素は、単位胞内でそれぞれ特定のサイトを占める(=規則化する)ことがトポロジカル物性の発現に不可欠である。そこで、高い規則度を有するエピタキシャル薄膜を得るために詳細な成長条件探索を行った。成長温度や各元素の堆積レートなどを厳密に制御することで、平成24年度では0.6程度であったC1規則度が0.9以上まで向上する条件を見出した。そのようなLaPtBi薄膜の価電子帯の電子構造を紫外光電子分光(UPS)により測定したところ、C1規則度によってPtに由来する価電子帯スペクトルが変化し、C1規則度が高い方がシャープな形状を示した。また、C1規則度0.72程度の(001)LaPtBiではフェルミエネルギーにおいて価電子帯スペクトルの立ち上がりが存在しており、C1規則度0.94程度の(111)LaPtBiではフェルミエネルギーでの立ち上がりは小さくなった。規則度の向上にともないフェルミエネルギーにおける状態密度が減少し、ギャップが開く兆候をとらえた結果であるといえる。電気伝導測定から、C1規則度とキャリア濃度の対応関係について、規則度が高い方がキャリア濃度は低く、移動度は高くなる傾向を示した。これはUPSで見られた傾向と一致している。また、一般にローレンツ力により2次曲線の挙動を示す磁気抵抗効果が、本研究のLaPtBi薄膜では線形成分を含むことが分かった。これは線形なバンド分散に由来する可能性があり、以上の結果から本研究で作製したLaPtBi薄膜がトポロジカル絶縁体としての有力な候補であることを示すことが出来た。さらにトポロジカル物性を発現させるためには、格子歪の導入が不可欠であり、今後の研究課題である。
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