研究概要 |
本研究では、MRIと磁気ハイパーサーミアを一体化する「セラノスティクス」の実現を可能にするような磁性ナノ粒子の開発を目的とした。 平成24年度に、MRI造影剤及び磁気ハイパーサーミア用発熱体として応用するために必要な特性を満たす磁性ナノ粒子を合成することができていたため、平成25年度は、この磁性ナノ粒子を用いて、担癌マウスを用いた動物実験により、腫瘍をMRIで造影し、さらに、磁気ハイパーサーミアで治療することを試みた。この磁性ナノ粒子を担癌マウスに静脈内投与すると、24時間後に腫瘍を造影することができた。腫瘍の組織解析から、この磁性ナノ粒子は腫瘍組織内の壊死している組織ではなく、生存している組織に局在していることが明らかになった。さらに、この磁性ナノ粒子を担癌マウスに静脈内投与してから24時間後に交流磁場(230 kHz, 100 Oe)を印加することで、この磁性ナノ粒子を用いた磁気ハイパーサーミアの治療効果を評価した。この磁性ナノ粒子を投与した担癌マウスに交流磁場を印加すると、腫瘍だけが加熱され、20分後には腫瘍の温度が周囲の正常組織の温度より6℃高くなっていることがサーモグラフィで確認された。また、腫瘍の体積変化から、この磁性ナノ粒子を用いた磁気ハイパーサーミアにより腫瘍細胞の増殖が著しく抑制できるということが明らかになった。さらに、生存率も大幅に改善し、対照群(無処置、磁性ナノ粒子投与のみ、交流磁場印加のみ)は8週以内に全滅したが、磁気ハイパーサーミアを行った群は12週以上生存率100%であった。 さらに、生化学検査によりこの磁性ナノ粒子の毒性を評価したところ、毒性は認められなかった。 以上の結果は、本研究で開発した磁性ナノ粒子を用いることで、MRIと磁気ハイパーサーミアを一体化する「セラノスティクス」の実現が期待できることを示唆している。
|