研究課題/領域番号 |
24760561
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
上田 政人 日本大学, 理工学部, 講師 (80434116)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 炭素繊維 / 圧縮強度 / マイクロメカニクス |
研究概要 |
ピエゾアクチュエータを用いて製作した小型の微小荷重‐微小変位量の圧縮試験機を走査型電子顕微鏡内に設置して,炭素繊維の軸方向圧縮試験を実施した.炭素繊維は一端をベースに固定した後,座屈を防止するために集束イオンビームを用いて繊維長を10μm以下に加工して試験片とした(一端固定,一端自由条件の柱状試験片).代表的なPAN系の炭素繊維を用いて本装置により軸方向圧縮試験を実施し,荷重‐変位線図を取得した.負荷初期から破壊に至るまで線形的な荷重‐変位線図が得られ,本手法により炭素繊維の軸方向圧縮試験及びその観察が可能であることを確認した.しかし,試験機コンプライアンスが大きく,引張の破断ひずみから予測される圧縮破壊までの炭素繊維の変形量(0.2μm)に対して測定された変形量が2μm程度と大きく,ヤング率の正確な取得は困難であった.この点については,走査型電子顕微鏡によって取得した画像から,繊維の変形量のみを画像解析によって抽出することで解決できる.一方,得られた最大荷重を公称の断面積で除した炭素繊維の圧縮強度は3000MPa程度であった.炭素繊維の引張りにおける破壊確率はワイブル分布に従い,その尺度母数が代表強度を与えるが,本実験にて使用した炭素繊維の引張りにおける代表強度は6000MPa程度であった.破壊後の炭素繊維の破面は圧縮破壊により形成した凹凸形状が観察されたが,圧縮強度が引張強度と比較して小さいため,端部破壊などによる見掛けの強度低下も考えられる.負荷面の平滑度及び平行度が測定される圧縮強度に与える影響について検討が必要である.また,今後は様々な炭素繊維を用いて,引張強度と圧縮強度との関係及び圧縮強度に与える表面欠陥の影響について検討する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は下記の2点を目標としていた. (1)ピエゾアクチュエータを用いた微小荷重‐微小変位量試験機を走査型電子顕微鏡内に構築して,圧縮試験を実施する. (2)炭素繊維の圧縮試験より,荷重-変位線図を取得して圧縮特性を評価する.また,圧縮破壊の起点及びその進展の観察を行う. 上記(1)については完了した.(2)については,炭素繊維の荷重-変位線図が取得可能となり,圧縮破壊の起点及びその進展の詳細観察を進めている.この点については次年度以降においても様々な炭素繊維について検討を行う必要があり,継続して実施する.
|
今後の研究の推進方策 |
走査型電子顕微鏡内で逐次観察しながら炭素繊維の軸方向圧縮試験を実施して,炭素繊維の圧縮強度とそのばらつきについて検討する.また,引張強度の異なる数種類の炭素繊維を用いて圧縮強度を測定し,引張強度と圧縮強度との関係を明らかにする.その結果から,近年の炭素繊維強化プラスチックにおいて引張強度が向上しているのに対し,圧縮強度が向上していない原因を究明する.また,圧縮強度に与える炭素繊維表面の欠陥の影響を検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|