研究課題/領域番号 |
24760564
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 弘 北海道大学, 電子科学研究所, 博士研究員 (80621599)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多孔質 / 有機-無機ハイブリッド / ガラス / フラクタル |
研究概要 |
本研究の目的は、数学的な概念であるフラクタルを多孔質体の設計指針に導入し、非常に大きな表面積を有するフラクタル多孔質体を開発することである。高度に発達した階層構造を有する多孔質体は、非常に大きな表面積と様々なサイズの細孔に由来する流路が存在するため、触媒や分離などの機能性の向上が期待される。このような多孔質体の創製には、ミクロ孔(<2nm)、メソ孔(2~50nm)、マクロ孔(>50nm)を階層的に形成することとその評価手法が重要である。平成24年度はナノコンポジット法と高分子テンプレート法を用いて、数十nmから数百μmにわたる階層構造を有した多孔質シリカの作製を行った。平均一次粒子径が7nmのフュームドシリカとポリビニルアルコール(PVA)を水に分散させたSiO2-PVAサスペンションに、アルキルケテンダイマー(AKD)を加え乾燥を行い、多孔質シリカの前駆体とした。これを600℃以上で燃焼させることによって多孔質シリカを得た。多孔質シリカの細孔分布を水銀圧入法と窒素吸着法から求めた。その結果、SiO2-PVAサスペンションの組成比とpHを変化させることによってSiO2ナノ粒子とPVAの分散状態が変化し、多孔質シリカの数百nmから数十μmにおける細孔分布が変化することが分かった。更にSEM像から得られた多孔質の二次元構造をボックスカウント法にて解析することによって、フラクタル次元2.5以上の階層的な細孔であることが明らかとなった。ナノコンポジット法と高分子テンプレート法を組み合わせることによって新規フラクタル多孔質体が作製できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、ナノコンポジット法と高分子テンプレート法を用いたフラクタル多孔質体の作製方法と評価方法の検討を行った。その結果、作製方法と評価方法の有用性を確認でき、新規多孔質体の可能性を見いだした。当初の目的通り研究を遂行することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題は、10nm以下の細孔形成方法の確立と機能性の付与である。細孔形成方法は、ゾル-ゲル法とナノコンポジット法を組み合わせてについて検討を行う。既往の研究では、ナノコンポジット法と高分子テンプレート法を用いると数百nmから数十μmにわたって階層的な細孔を有した多孔質シリカの作製が可能であることが分かった。一方、ナノコンポジット法と高分子テンプレート法の組み合わせのみでは、本研究の目標とするナノからミリオーダーの広範囲にわたって階層構造を有した多孔質シリカを作製することは困難であることが分かった。 そこでナノコンポジット法と高分子テンプレート法に加え、ゾル-ゲル法を組み合わせることによってサブnmからサブμmにわたって階層構造を有した多孔質シリカの作製を目指す。ゾル-ゲル法の原料としてTMOSやTEOSなどのシリコンのアルコキシドを用い、pHによる加水分解・重合反応を制御することで所望サイズの細孔を形成する。また、ナノコンポジットの原料では、粒子径の異なるフュームドシリカナノ粒子と、重合度およびけん化度の異なるポリビニルアルコールを用い、pHを変化させることによってシリカ粒子の分散・凝集状態の制御を行い、所望の細孔分布を有した多孔質シリカを作製する。細孔分布の評価は、ガス吸着法と水銀圧入法を中心とした細孔分布計測と、断面SEM観察から得られる細孔の二次元像を数学的解析手法(ボックスカウント法)によって行う。 また、多孔質の機能性について検討を行う。大きな表面積を有した多孔質は、ガスのセンシングや吸着剤として有望である。多孔質体の材料を検討し、これら機能性発現の可能性を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に実施する計画のうち、材料合成用試薬やガラス器具などの実験器具の購入に充てる。
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