階層的かつ様々な大きさの細孔を持つ多孔質材料は、巨大な比表面積と多様な細孔サイズに由来する流路が存在するため、分離、光、電子機能性材料など様々な用途への応用が期待される。しかし、このような階層的な構造(フラクタル)を有した多孔質材料の作製方法は確立されていない。そこで本研究では、ミクロ孔(<2nm)、メソ孔(2-50nm)、マクロ孔(>50nm)を階層的に形成する手法を開発し、その応用を目指した。以下に、本年度に得られた主な結果について示す。 (1)ミクロからメソ孔の細孔を制御する方法として、ナノコンポジット法の開発に取り組んだ。フュームドシリカナノ粒子とポリビニルアルコールを、pHを調整した水溶媒に分散し、SiO2-PVAサスペンションを調整し、乾燥させることでSiO2-PVAナノコンポジット多孔質を得た。作製したナノコンポジットのpHおよびSiO2とPVAの組成比と細孔サイズについて調べたところ、細孔サイズは数から数十ナノメートルであり、pHおよびPVAの含有量の増加とともに細孔サイズは減少することが明らかとなった。 (2)SiO2-PVAナノコンポジット多孔質材料の光学材料として応用を行った。まず、上述した方法でメソ孔を有したSiO2-PVAナノコンポジットを作製した。得られたナノコンポジットを様々な金属硝酸塩溶液に浸漬し、1100℃から1200℃で焼成することで各種金属イオンがドープされたシリカガラスが得られた。種々の金属イオンのドープを行った結果、希土類イオン、遷移金属イオン、およびアルミナナノ粒子をドープした場合に、紫外線励起で発光する透明なシリカガラスが作製できることが明らかとなった。
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