研究課題/領域番号 |
24760567
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
淡 振華 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60624129)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノポーラス / 微量貴金属添加 / 触媒材料 / 表面拡散 / 電池材料 |
研究概要 |
多孔質金属は新しい材料として、触媒や燃料電池電極等へ活発に応用されている。特に結晶銅合金から脱合金化処理によって多孔質銅を作製する研究例が多数報告されている。しかし、結晶質合金中に金属間化合物が存在するため微細構造が不均一な合金脱合金処理過程を経ると均一性の低い多孔質が形成することが問題となっている。また、従来の多孔質銅は孔径が数十から数百nm程度である。多孔質材料の力学性能、触媒性能、使用寿命などは孔径に依存することが分かっており、本研究では、貴金属(NM:Ag,Au, Pd)をアモルファスTi-Cu合金に微量に添加し、フッ酸脱合金化処理によって孔径10nm以下の超微細多孔質を作製することを第一の目的とした。そして作製したナノポーラス銅にAu,Ptめっきしたものや貴金属添加したナノポーラス銅の触媒特性を調査し、本研究で見出した孔径10nm以下の各三元アモルファス合金系から得たナノポーラス銅を触媒材料として発展させることを第二の目的とした。 高純度Ti、Cu、Auを用いて、アーク熔解法およびメルトスバン法で、アモルファスTi-CuとTi-Cu-Auリボン合金を作製した。その後、試験片を0.03-0.65 M フッ酸中に、30 min-720 min浸漬し、多孔質銅を作製した。孔径約数百nmのナノポーラスCuを作成した。微量(<2at%)のニッケル、金、銀などを添加してナノポーラスCuの孔径が一桁小さくなった。走査型電子顕微鏡と透過電子顕微鏡を用いて孔径と靭帯の特征サイズの変化、残留金属相の組成、結晶状態、形態などを確認し、多孔質銅の微細化は脱合金過程中に添加した貴金属がCu原子の拡散を抑制するというメカニズムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微量金属の添加による微細化の調査は提案の際の予想通りに順調に進めている。平成24年度は微量金添加の影響を中心にして実験を行い、添加量、溶液、温度などの影響を調査した。結晶質前駆体とアモルファス前駆体は脱合金化処理過程中の結晶相の影響なども調べた。結論としてはアモルファス前駆体の上に形成したナノポーラス銅の均一性は高いということ分かった。金、銀などの金属の添加により孔径が140から9nmに小さくなった。2at%の金添加より0.65M HF溶液中に形成したナノポーラス銅の孔径サイズはさらに小さくなり、孔径7nm以下の超微細ナノポーラス銅を得られた。さらに、ニッケルなどの表面拡散係数が低く、安価な元素の添加影響も調査した。コストが低い、孔径の小さい電池触媒材料の開発にも着手した。ニッケルの微量添加は孔径約20nmのナノポーラス構造をでき、コスト金とPdなどの添加より40%低くなった。 触媒性能を図る実験は他のナノポーラス材料の上に行った。同じ実験手法、実験装置を用いて、金、白金、ニッケルなどの安定した超微細ナノポーラス銅の触媒特性と電池材料の使用時間を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
貴金属未添加のTi-Cu合金から脱合金処理した試験片にH2PtCl6あるいはHAuCl4含有溶液中においてAuあるいはPtをめっきし、その後0.5 M H2SO4および0.5 M H2SO4+xM CH3OH溶液中でのCV(Cyclic Voltammetry)曲線を測定し、電気化学特性やメタノール酸化特征を評価する。また貴金属添加Ti-Cu-NM合金脱合金を処理して得られた多孔質銅に関して、同様に評価する。このCV測定から得た各パラメーターを抽出して、貴金属添加有無の触媒性能変化をまとめる。また触媒性能の孔径サイズへの依存性も明らかにする。貴金属添加のTi-Cu-Ag, Ti-Cu-Pd合金系から脱合金処理した試験片にH2PtCl6あるいはHAuCl4含有溶液中にAuあるいはPtをめっきし、その後0.5 M H2SO4および0.5 M H2SO4+xM CH3OH溶液中でのCV(Cyclic Voltammetry)曲線を測定し、電気化学特性やメタノール酸化特征を評価する。このCV測定から得た各パラメーターを抽出して、貴金属添加有無の触媒性能変化をまとめる。触媒性能の孔径サイズへの依存性を明らかにする。Ag、Au、Pd添加によって微細化の効果と触媒性能を評価する。その上で実用化に近い条件での燃料電池電極の使用寿命を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画は以下のとおりである:1)物品費―主に原料と薬品の購入費用(Ti、Cu貴金属(Au,Pd,Ptなど)原料とAu/PtのコーティングのためにHAuCl4/HPtCl4とPVP各試薬品を購入する費用); 2)旅費―2013年度国際学会に3回参加する予定; 3)論文掲載費用―本年度論文を6編以上投稿でき、掲載費用25万円予算を使う;4)試料分析費用―原子拡散の抑制メカニズムを調べるためAtom Probe Transmission Microscope等分析装置を用いた原子レベル程度の調査が必要と考え、装置使用賃料を支払う。
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