平成24年度は、複合組織鋼を用いたEBSD-Wilkinson測定の実施、三次元シリアルセクショニング法によるマルテンサイト組織の三次元化ならびに放射光回折法による積層型複合組織鋼の内部応力測定を実施した。鋼の力学的特性を飛躍的に向上させるためには、ミクロ組織を複合組織化することが有効な手段の一つと考えられている。しかしながら、複合組織鋼における好ましい力学的特性の発現機構については明らかにされていない点が多く検討が必要である。そこで、高強度組織であるマルテンサイト組織と高延性組織であるフェライト組織の複合組織鋼で比較的好ましい力学的特性を示すDual-phase鋼を題材に、EBSD-Wilkinson法によるサブミクロン~ミクロンスケール内部応力測定を実施した。その結果、高強度相内の結晶方位に依存した変形のみならず相の分布形状も最終的な力学的特性に影響することが明らかとなった。単一組織鋼の場合、組織3次元的形態は2次元情報を基にある程度の予測が可能と考えられている。しかしながら複合組織鋼では2次元イメージから予想される以上に形態は入り組んでおり、本研究においても組織を3次元的に観察することが重要と考えた。そこで、高強度鋼であるマルテンサイト鋼を題材にミクロ組織の3次元化を実施した。2次元では線として認識される界面が3次元では面として認識され内部では分割等が生じ複雑化している様子が見えつつある。強度の異なる異種相どうしが接する界面付近では変形が局所化すると推定され3次元的な界面の評価が重要であると考えられる。
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