研究課題/領域番号 |
24760570
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉岡 朋彦 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (50452016)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | イオントフォレシス / 経皮吸収 / DDS |
研究概要 |
本研究では、電圧をかけて皮膚・粘膜から薬剤を体内に導入するイオントフォレシス用電極の開発を目的とする。当該電極には、薬剤(麻酔剤、慢性疾患用薬剤)を多量に担持し、皮膚や粘膜と安定に密着する特徴が求められる。一方で、電極内抵抗を制御して電場に応じて薬剤を送達できる電気化学的特性も必要とされる。そこで基材電極と薬剤担持ハイドロゲル層から構成される電極を、電気分解堆積法を用いて作製し、薬剤を高効率に体内に輸送できる界面制御技術を確立する。 本年度は、電気化学的反応を利用して種々の金属表面にアルギン酸のハイドロゲル層を形成させた。金属としてPt、Ag、Al、Ti、もしくはSUS316Lをアルギン酸水溶液中に浸漬し、直流電流を流すことによってアルギン酸ハイドロゲルが陽極に形成することを明らかにした。これは、水の電気分解反応によって陽極で発生するプロトンが、アルギン酸のカルボキシル基をプロトン化し、カルボキシル基間の水素結合によってゲル化・堆積したと考えられる。電流密度および時間の制御によって、堆積重量は制御可能であった。堆積したアルギン酸ハイドロゲルの金属への接合性を調べたところ、Alが他の金属と比較して有意に接合強度が高かった。堆積したアルギン酸ハイドロゲルを凍結乾燥後に金属表面からの剥離強度を調べたところ、Al以外の金属では金属と堆積したアルギン酸との界面で剥離が起こったが、Alでは堆積したアルギン酸が強固に固着していることが明らかとなった。これはアルギン酸のカルボキシル基とAl表面に形成した酸化物層との相互作用によるものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水の電気分解反応制御によって種々の金属表面にアルギン酸ハイドロゲル層を堆積・接合できることを明らかにした。アルギン酸ゲルは多くのカルボキシル基を有しており、カルボキシル基との静電相互作用によってプラス荷電の薬剤を静電相互作用によって担持できると考えられる。ハイドロゲルの堆積法に確立については予定通り進捗した。アルギン酸を堆積させた電極の電気化学的特性の計測を当初計画では企図していたが、測定条件の決定等に時間がかかり、現在も進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
1. ハイドロゲル堆積法の確立と電気化学的特性の計測 前年度に引き続き、ハイドロゲル堆積とその電気化学的特性の測定を行う。本年度は主に、ハイドロゲルと基材電極の相互作用をX線光電子分光法や表面プラズモン共鳴測定によって解析することに注力する。アルギン酸のようなアニオン性ハイドロゲルは陽極へ、キトサンのようなカチオン性ハイドロゲルは陰極へ堆積する。それぞれのハイドロゲルの堆積に適した基材電極の種類および表面状態を明らかにすることを目指す。 2. 電極への薬剤の担持と電場下での放出特性の解析 ハイドロゲルを堆積させた電極について、薬剤の担持性および電場下での放出特性を調べる。薬剤としては、リドカイン、インスリン、プロプラノロール、ロキソプロフェン、インドメタシンなどの実験を企図している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は効率的に研究が進展したため残額が生じた。次年度は、前年度の繰越金を含め、主に電極の材料、試薬購入費、電極作製に係る消耗品費に研究費を使用する。さらに国内外の学会へ参加し成果を広く発表していくため、旅費を使用する。また、国際論文誌への論文投稿のための諸経費(英文校閲費、投稿料等)に使用する計画である。
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