最終年度は、シンチレータ材料のホスト候補としてBa3Y2B6O15に注目し、CeおよびPr添加試料の合成と遷移スペクトル解析、XANES測定および電子状態計算を行った。遷移スペクトルより、真空紫外から可視域にあるホストバンド端吸収および希土類イオン4f-5d間遷移の吸収と発光を確認した。XANES解析より、還元処理したCe添加試料ではCe3+が支配的であることを示した。電子状態計算より、置換エネルギーの評価ではCeの占有サイトはホスト中の2つのYサイト双方が考えられるが、ホストの伝導帯を構成する軌道とCe5d軌道のエネルギー差が異なり、一方がホスト励起での発光に寄与しやすいことを示した。これは、一方のCe4f-5d励起とホスト励起での発光スペクトル形状が近いことと対応していた。また、代表的な立方晶酸化物のSrTiO3を用いて放電プラズマ焼結法(SPS法)での高密度試料作製を行い、可視から赤外域の透光性の昇降温速度および粒度分布依存性を評価した。 本研究では、希土類添加酸化物の発光機構の実験と理論計算による解析、特に、ホストの吸収から希土類イオンへのエネルギー伝達の解析、および、透光性多結晶シンチレータ・レーザ材料への応用の検討を目的とした。主にシンチレータ材料としてCeとPrを、レーザ材料としてNdを添加した酸化物に対して、遷移スペクトル測定による基礎的な光吸収、発光の特徴を調べ、理論計算結果とあわせて電子状態との関係を明らかにした上でエネルギー伝達についてモデルを示した。また、希土類の占有サイトと周辺構造の評価とその影響について考察した。高温真空中とSPS法での焼結による透光性多結晶作製法についても温度、粒度依存などの評価を行った。これらより、個々の材料に対する発光機構の解析と透光性多結晶作製の基礎の一部が得られ、材料設計基盤の構築の一歩となったと考えている。
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