研究課題/領域番号 |
24760574
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
仲村 龍介 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70396513)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノポーラス材料 / アモルファス酸化物 / 構造解析 / 拡散 |
研究概要 |
今年度は主に,アモルファス Ta2O5およびNb2O5薄膜およびWを数%含有するアモルファスTa2O5-WおよびNb2O5-W薄膜の加熱による結晶化過程とボイド形成過程を透過型電子顕微鏡を用いて調べた.いずれにおいても,結晶化によって一方向に配向・伸長したボイドの生成が観察された.アモルファスTa2O5およびNb2O5は,ユニットセルのb軸がaおよびc軸に対してそれぞれ10および7倍ほどの長さをもつ斜方晶へ結晶化するという共通の特徴が見い出された.ボイドの成長方向は長軸のb軸に対して垂直の関係があり,結晶異方性とボイドの配向性に相関関係があることが明らかとなった.また,第3元素のWが導入された場合,伸長方向へのアスペクト比が高くなる特異な傾向が見られた.ボイド形成の詳細のメカニズムを解明するために,斜方晶の長周期構造に起因する衛星反射スポットを撮影し,ボイド成長との関連性を解明するための実験を進行中である. さらに,ボイド形成・成長の解明に必須な原子拡散挙動を解明するために,18O同位体をトレーサーとして,アモルファスTa2O5およびNb2O5薄膜中の酸素の拡散係数の測定を行った.拡散アニール処理から,2次イオン質量分析器により18Oの表面浸透プロファイルを測定する実験過程を確立し,次年度に実施する温度依存性および時間依存性の解明の土台を築いた. また,結晶化に向けたアモルファス構造の連続的変化を解析する手法として,電子照射による結晶化のその場観察動径分布解析を考案し,アモルファスAl2O3を題材に動径分布関数の連続的変化を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アモルファスTa2O5およびNb2O5の結晶化に伴う配向性ナノボイド形成の全体像を把握することを1年目の研究計画の主要な目的とした.ボイド配向と結晶異方性との関連,および,第3元素によるボイド伸長化の促進といった,Ta2O5とNb2O5に共通のボイド形成挙動が見られることが明らかになり,上記の目的をおおむね達成できたといえる.また,電子線動径分布解析やアモルファス酸化物中の酸素の拡散測定といった実施計画項目についても,基本的な実験プロセスを確立するところまで進んでおり,次年度での進展を見込める.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き透過電子顕微鏡による構造解析を進めて,ボイド配向と結晶異方性との関連性を総括する.さらに,ボイド形成・成長の解明に必須な原子拡散挙動を解明するために,18O同位体をトレーサーとして,アモルファスTa2O5およびNb2O5薄膜中の酸素の拡散係数の測定を行う.拡散アニール処理から,2次イオン質量分析器により18Oの表面浸透プロファイルを測定する実験過程は確立されたので,次年度は,拡散係数の時間依存性および濃度依存性の解明を進める. アモルファスの結晶化を取り扱う本研究では,結晶化温度を定量的に把握することが重要である.新たに,熱分析によるアモルファス酸化物薄膜の結晶化過程の調査を研究項目に据える.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進める中,結晶化に伴うボイド形成および原子拡散挙動の理解のために,正確なアモルファス酸化物の結晶化温度(アモルファス酸化物の熱的安定性)を把握する必要性が生じた.次年度に高精度の示差走査熱量計をレンタルし,アモルファス酸化物の熱分析を進める計画を見込んで,予算の繰り越しを決めた.次年度は,年間170万円ほどのレンタル費用が主となり,その他を物品費や旅費などにあて,当初の研究内容も変更なく実施する計画である.
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