本研究課題は細胞を、温度変化のみにより細胞を分離するインテリジェント界面の設計を目的としている。研究期間において、以下の検討をおこなった。温度応答性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)を、ガラス基板上に表面開始原子移動ラジカル重合(ATRP)により高密度に修飾し、細胞の接着・脱着に適した界面を設計した。この際の最適なPIPAAmの分子量は12800であり、PIPAAm修飾密度は0.36 chains/nm2であることがわかった。これらのPIPAAm修飾ガラス基板へは細胞の接着速度はほぼ等しいのに対し、脱着速度は各種細胞で異なることがわかった。この脱着速度の差を利用して早く脱着する血管内皮細胞と遅く脱着する骨格筋筋芽細胞の分離が可能である事を示した。また、疎水性モノマーであるn-ブチルメタクリレート(BMA)を共重合により導入した表面による検討では、疎水性が増加することにより細胞の接着性を増幅させすることが可能であることがわかった。また、温度による細胞の脱着性の検討をしたところ、血管内皮細胞は20℃で効率の良い脱着を示したのに対し、繊維芽細胞では10℃で効率の良い脱着を示した。これらの脱着温度の違いを利用して両細胞を分離することに成功している。さらには荷電性モノマーを導入し、特定の細胞種のみを接着させた後、温度変化により脱着するインテリジェント界面の設計をおこなった。これらのインテリジェント界面を用いた細胞分離カラムなどの分離デバイスを設計することで、細胞を非侵襲で分離・精製可能であると考える。
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